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油断大敵な二人の関係
「ハァ…何やってるんだ俺は。仕事に集中しないと――」
そう言って自分に言い聞かせると、俺はコピーした紙を数枚手に取った。そして、その場を離れようとした。すると、後ろから手が伸びてきた。ハッとなって後ろを振り返ると、阿川がこっちをジッと見ていた。
「ッ……!?」
近くでジッと見つめられると、身体が動けなくなった。そしてあいつは、後ろの背中にピタリとくっついてきた。その妙な体温が心を煽った。
「手伝いましょうか――?」
阿川はそう言って自分の右手を然り気無く下に降ろすと手の甲に自分の右手を重ねてきた。その瞬間、ビクッと反応すると俺は持っていた用紙を反射的に床に落としてしまった。
「あ~あ、何やってるんですか葛城さん。ホントにおっちょこちょいだな~」
「ッ……!」
阿川は平然とした表情でそう言ってくると、俺が床に落とした用紙を拾ってみせた。
「おっ、お前がいきなり驚かすからだろ!?」
「葛城さん?」
「いきなり人の背後にまとわりついて来た癖に、人のせいにするな…――!」
そう言って言い返すと、自分も床にしゃがんで紙を拾い集めた。すると再びあいつの手が甲の上に重なってきた。手と手が触れた瞬間、俺の中でチリチリとした熱が込み上げてきた。そうなると体が急に熱くなってきた。ふと視線をあいつに向けると、阿川は俺のことをジッと見つめてきた。お互いの視線と視線がぶつかると目を反らした。
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