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油断大敵な二人の関係

 ドアがガチャッと開いた瞬間、あいつは咄嗟に俺の口元を手で塞いだ。 「阿川いるのか?」  その声は柏木の声だった。阿川は柏木に名前を呼ばれると一瞬沈黙した。そしてこっちをチラッと見てきた。  この場を誰かに見られたらマズイ状況だった。そう思うと妙な緊張感が走った。柏木は再びドアの前でアイツの名前を呼んだ。 「阿川いないのか?」 柏木はそう言ってドアの前から離れると部屋の中に入ってきた。その瞬間、再び緊張感が走った。阿川は再び名前を呼ばれたが、そこで黙って沈黙したままだった。  それどころか余裕の様子で笑っていた。俺は、この場を同僚に見られたらマズイと思い、咄嗟にアイツの足を靴で踏みつけた。するとアイツは、一瞬、顔を歪めて痛がった様子を見せた。そして真上に押さえつけた両手をパッと離した。押さえつけられていた両手を解放されると、乱れた服を慌てて直した。  阿川は俺から離れるとスタスタと歩いて、棚の後ろから顔を出した。「呼びましたか?」そう言って平然と返事をした。 「あれ、いたのか? 探しただろ?」 「ああ、ちょっと資料を探してたんです――」  柏木は阿川が棚の後ろから出てくると、そこで二人して立ち話しをはじめた。俺は間一髪、同僚に濡れ場を見られずに済んだ。    むしろ横にボードやら、棚が並んでいたから、見られずに済んだと安堵とセーフの気持ちの方がデカかった。柏木は俺の存在に気づかない様子で阿川と話していた。 「資料はみつかったのか?」 「ああ、ちょっとここには見当たらないです」 「そうなのか? 俺も手伝ってやろうか?」 「大丈夫です。自分で探しますので――」 「遠慮するな、二人で探した方が早いだろ?」  柏木はそう言ってこっちに向かってきた。すると阿川が柏木の前に立った。

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