85 / 126

急接近。

「――ッ、葛城さん」  一瞬、彼がまだ部屋に居るのかもと期待した。だけど葛城さんは既に帰って姿は無かった。 「ああ、すれ違った……。せめて帰る前に一言話したかったなぁ」  そこで切ない溜め息をつくとガクンと肩を落とした。不意にソファーの前にあるテーブルに目を向けると彼の置き手紙があった。 「あっ……!」  置き手紙を見ると、彼の文字で伝言が書かれていた。″テーブルの上は片付けておいた。あと朝食も作ってやった。残さずに食べろよ。″ そこには彼の優しさがあった。テーブルの上には作りたての手料理がトレーの上に置かれていた。 「葛城さん……!」  彼の優しさを感じると、急に会いたくなった。こんな時に電話番号がわかってたら話せるのに…――。  その時、近くに置いてあった自分の携帯に目がとまった。こんな所に携帯置いたっけなと、首を傾げると手に取った。すると画面には、見知らぬ電話番号があった。 「――え、これってもしかして……!?」  直感でその見知らぬ番号にかけてみた。すると電話に彼が出た。

ともだちにシェアしよう!