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恋の行方。
持っていたグラスを落とすと、テーブルの上が一瞬、濡れた。柏木は隣で気がつくとおしぼりを手に持ち、慌ててテーブルの上を拭いた。
「葛城、何やってるんだよ…――!?」
「あ…。すまん、ちょっと手元が狂った」
「なんだ? 酔ってるのか? お前大丈夫か?」
「ああ、ちょっと……」
少し顔が赤くなると酔いが回っていた。ボーッとした顔で然り気無く、阿川の方を見た。アイツはいつの間にか自分の席に戻っていた。そして平然とした様子で戸田課長の相手をしていた。
「大丈夫か信一? ほら、肩貸してやるから少し休んでろ」
「ん…すまん。でも、大丈夫だ…――」
ボーッとした顔で返事をした。すると、柏木が俺の肩に後ろから手を回すと自分の方にグイッと引き寄せてきた。一瞬「え…?」と思った。
「ほら、少しは楽になったろ?」
柏木に左の肩を抱かれると、それを近くで見て居た女子達が急に騒ぎ始めた。
「やだ~! 柏木さんと葛城さんったら、何だか2人とも怪しい~!」
「コラッ! お前達、茶化すなよ! これだから女子達は…! ただ単に懐抱してやってるだけだ! 誤解するなよな!?」
「キャ~! 懐抱だって~〜!」
女子達は面白がって騒いだ。頭は酔っていても、さすがにマズイと思った俺は、直ぐにアイツの手を振りほどこうとした。すると近くで、グラスを倒した音がした。視線を向けると阿川は、驚いた表情で俺達の事を見ていた。
一瞬、胸がドキッとした。アイツは俺達を見ると傷ついた目をした。その様子にさすがの俺も酔いが目が覚めた。阿川は悲しそうな瞳をすると顔を反らした。
「阿川…――」
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