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恋の行方。
突然、柏木からそのことを聞かれると、思わず戸惑った。そんな事、自分が一番知りたい所だ。まさか自分がアイツをあんな風に庇うなんて……。 俺はどうしてあの時、アイツを…――。
「信一、まさかお前……」
「え…?」
柏木は目の前で今まで見た事もない表情でジッとみてくると、肩に乗せてきた手が小刻みに震えていた。そして、目の前で顔色が青ざめていた。
「なっ、何だよ……?」
「あ…いや、なんでもない。きっと、俺の気のせいだよな……。まさかお前がそんなはず…――」
「陽一?」
肩に乗せた手に力がグッと入ると、葛城は急な痛みに反応した。目の前で、彼の様子がおかしい事に明らかに戸惑った。
「ッ、肩痛いから離せよ……!」
「あ…わりぃ。すまなかった…――」
そこでハッとなって我に返ると、彼の肩に乗せた手を離して顔を反らした。
「すまない。今のは忘れてくれ……」
「え…――?」
そう言って彼のそばを離れると、近くに置いていた自分の鞄を拾って帰る支度をした。急に変な態度を見せると、葛城は不意に彼の手首を掴むと心配そうに話しかけた。
「おい、急にどうした? お前、顔色が悪いぞ。それに今から帰って、終電とか間に合うのか? このまま朝までうちに泊まっていけばいいだろ。なぁ、聞いてるのか陽―」
その瞬間、柏木は後ろを振り向くと彼のことを違う視線でジッと見つめた。普段とは違う、別の視線に気がつくと、彼の掴んだ手首を離して息を呑んだ。
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