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ともだち
フロントガラスに叩きつけてくる雨粒を見てた。
大きい雨粒が、周りの小さな雨粒を巻き込みながら、すべり、流れていく。
なんとか流星群を見たくて、車をだしてよと肩に手をかけた。
いいよ、って、環は言った。
それで真っ暗い山道を走って、見晴らしのいいところで止まった。
それで、はじめにもどる。
雨粒が、すべり、流れていく。
「秋生、本当に今日?しぶんぎ座流星群」
「しぶんぎざ?」
「しぶんぎざ流星群だろ?見たかったの」
「そっか、しぶんぎ座。」
「しぶんぎって、なんだろね」
「詩文を記すってことじゃない?」
「え、詩文記?うそー、ほんとか?それ」
「さあー、しーらない」
環は、フロントガラスを見つめて笑った。
車のシートを倒した。
環の方に向いて、丸まった。
「どうした」
「環はさ、本当にもうすぐ結婚するの?」
「するよ。なんで?」
俺のきもちは、もうほとんど、モロモロって壊れかけている。
そうだな、クッピーラムネみたい。口に入れずに大切につまんでた、クッピーラムネ。汗でしけって
ずーっとそばにいるのは、俺だったのに。
手に持ってるだけじゃだめだったんだ。
ぽろぽろぽろって流れるのは、雨粒だけじゃないよ
「秋生?」
「…いいなー、結婚」
「あはは、ありがとう」
環は、指で俺の涙を拭った。
「…環は気づいてた?」
「…気づいてたもなにも。待ってたのに」
「ずるい」
「来世で、また秋生と会える。俺はそう思ってる」
「そんなん言って、言いくるめようとするなよ」
「あはは、ばれた」
シートが同じくらいの高さに倒れて、環と目線が合った。
環は、俺の手を握った。
「ほんとに、また会える。俺も秋生のこと好きだから。これからも」
「やめろよ、結婚するのに」
「秋生も、これから誰かと一緒になっても、俺のことを少しだけでいいから、好きでいてよ」
少しだけなんて、むりだよ
俺は、ずーっと環が好きだ
握られた指先を動かして、指と指を絡ませて繋いだ。
環の優しい顔を、写しとるように見つめた。
雨粒は、ぱたぱたと音を立てた。
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