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ふゆ、うみ、うそうつつ
「さむうー!」
コートのポケットに手を突っ込んで、砂浜を歩く。
本当に寒くて、灰色みたいな海を見た。
砂を踏む感触
冷たい潮風
立ち止まった。
波の満ち引きが、きれいな模様をつくる。
きれいだな、小さい白い泡
波のうごきに合わせて、濡れないように
追いかけて、逃げて、追いかけて、逃げて
環を見た。
笑いながらこっちを見てる。
「気を付けろって、ほら、秋生!濡れるぞ!」
「あははは、あ!濡れた」
髪が潮風にまみれてふわふわ、口に入った。
環は俺を見て、笑った。
足の指がひんやりして、背中がぞくぞくした。
「はああー!冷たい、痺れるー。なんか、もわもわする…指先、感触がよくわかんなくなっちゃった。俺、濡れてる?」
環はぼんやり俺のほうを見てる。
さっき、志真さんと付き合うことになったんだと言ったそのくちびる、半開き。
「ねえってば!環!俺、濡れてる?」
「あきおーーー」
「うわ、あははは!」
急に走ってきて、思い切り抱きしめられる。
環は結構力強くて、ゆらゆらとゆれる。
「あったかい、もうちょいこのまましてて」
環の腕の中にちゃっかり、いすわる。
俺の中途半端に長い髪を、環は梳いた。
しあわせだと思った。けど、便宜上
「そういうのは、彼女にやれよ!」
「はは、ごめん」
「あ、でも悪くないね」
抱きしめた。
俺たち、ともだちだよね?
潮風の粘ついたにおいが、首筋を掠めた。
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