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セラヴィ

「おめでとうー!あー、そっかあ…志真ちゃん、人妻になっちゃうんだ」 「人妻って!」 「なんか響きがやべえ」 志真ちゃんのウエディングドレスを縫った。 エンパイアドレスで、髪色に合わせてアイボリーのシルクタフタと、レースをたくさん使った。 明るいグレーのフロックコートに濃い青の蝶ネクタイをして、環は笑っている。 ふたりは今日、結婚する。 大好きなふたりだから、嬉しい。 嬉しいはずなのに、やっぱり俺は環が好きだったのになって気持ちも強くて、苦しくもあった。 ふたりの周りには、祝福する人たちでいっぱいで、俺は遠くからぼんやりそれを見ていた。 「あきお」 「あ、かなちゃん」 結婚式仕様に、今日はめちゃくちゃかっこいいかなちゃんだった。 「結婚したねえ、志真ちゃん」 「そうだねえ。かなちゃんは結婚しないの?」 「しないかな。できないし。俺今、リョウちゃんと付き合ってるし」 「え、リョウちゃんって、綾?」 「うん。一緒に住んでるんだよ、今」 「へえー!」 知らなかった。 来世でまた会える そんなばかみたいな言葉が何回もリフレインした。 現世でかなちゃんと綾みたいに、結ばれたかったって、思った。 志真ちゃんはとてもきれいで、環はかっこよかった。 お似合いの夫婦だと、思った。 かなちゃんは、俺の肩を抱き寄せた。 それから目元を隠すようにあたたかい手のひらで覆ってくれた。

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