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身体は動かずとも 2<ポッキーの日SS>
「リュー……少しは何か食べた方がいい」
「身体が怠い。物を持つことが面倒だ。今は休息が先だろう。お前もまだ本調子ではないのだから大人しく……」
「安心したらお腹が空くって言うだろう? あ、そうだ。これなら食べやすい」
僕は転がしてあったカリカリのスティックパンを持つが、手に持つという行為が疲れる。
こういう時はと、ソファーに寄りかかっているリューの隣に座る。
目を瞑って休んでいたリューが片目を開いて面倒そうにこちらを向いた。
「リュー、端っこを咥えてくれる?」
「また意味の分からないことを」
「手で持ってると僕も怠いから。リューも口で咥えるのは得意だろう?」
「お前が言うと……いや、いい」
リューは結局僕の言う事を聞いて口を開いてくれた。
怪我している腕を動かすよりかは口という判断なのだろうか。
妙に従順なリューに笑いながら、リューの口を支えに僕も口だけでパンを食べ始める。
(コレ、普通は盛り上がるはずなんだけど。リューだと何も表情も変わらないし、何してるんだかよく分からないな……)
苦笑して、それでも素直に咥えてくれていることを感謝して黙々と食べる。
リューも食べないかと思ったが、少しずつ食べているのが小動物っぽくて可愛らしい。
お互いに視線で探り合いながら、徐々に近づいていく。
暫くは咀嚼音だけが耳に届いていたが、パンは続けて食べると喉が乾いてくる。
全て食べきってしまうと、ついでにリューの唇にチュッと軽く触れてお礼をしてからゆっくりと身体を離す。
「はぁ……喉乾いた……」
僕の呟きを聞いたリューが水の入ったグラスの水を口に含むと、やや強引に僕の頭を引き寄せて唇を合わせてきた。
(これ、前にもやられたことあるって!)
口の中に急に水が入ってきたので、顔が離れる頃にはケホケホとむせる。
僕の口端から水が溢れると、リューがペロリと器用に舐め取ってきた。
(無駄に色っぽいというか、何というか……)
無表情でサラリとやってから、僕に視線を合わせてくるのが妙に刺激される。
(あぁ……身体動かすのが億劫なのに、今、めちゃくちゃヤりたい……)
はふ……と息を逃してから、悟られないようにリューを見遣る。
「リュー、もしかして……口移し、気に入ってるのか?」
「手を動かせない状況の場合はよくやる」
「いやいや! グラス持ってただろう?」
思わず指摘すると、リューが目元を和らげた。
疲れているせいなのか、眠いのか、原因は全くわからないが。
とても貴重な表情を見せている。
何故こんなにご機嫌なのか、まるで意味不明だ。
だが、今なら何をしても許されそうな気すらする。
(押し倒したい……! 良く分からないけれど、リューが可愛い!)
こういう時に限って身体がうまく動かせない。
それを分かってやっているのだとしたら、相当の確信犯だ。
「気が済んだのなら大人しくしてろ」
「リューのせいで無理だ。無駄に煽るのはやめて欲しいんだが」
「気のせいだ。お前はすぐそういう方向に……」
なんと言われても構わない。
お強請りするようにリューへと凭れかかり、顔をあげてまた唇を合わせる。
リューは表情とは裏腹に僕を受け入れて、快楽を享受する。
身体はボロボロなのに、二人とも妙な気分でそのままなだれ込むようにキスをして、次第に深く繋がっていく。
「んん……」
「……っふ」
傷だらけだからこそ、なのか。
動かぬ身体でも生命を確かめあうように身体を重ねようと、互いに力の入らない手で服を脱がし始める。
その動きは億劫なのに――
妙に心の奥を擽られ、刺激される。
気づけばソファーの上でキスを交わしながら、どちらからと言う訳でもなく密着して互いの身体に触れていく。
「フフ……なんだか凄く興奮する。リュー、痛くないか?」
「動かすと痛みは多少感じるが、大したことはない」
「じゃあ、僕が上に乗ってあげるから。リューはそのままで」
返事はなくとも、拒否はない。
僕は気にせずこのままなだれ込むように、今夜の行為に没頭していく。
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