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身体は動かずとも 1<ポッキーの日SS>
「ごめん、僕のせいで」
「今はこの状況を打破することだけを考えろ」
ギルドからの依頼の最中。
僕がミスをしたせいで敵方に捉えられるという大失態を引き起こしてしまった。
たぶんリューだけだったら逃げられるのだろうけど、バディを見捨てないと決めているリューのことだ。
それができないのだろう。
柱に身体をロープで括り付けられているせいで身動きが取れない。
リューは危険だと見做されてほとんどの装備を取り上げられているし、僕も鞭は取り上げられてしまっている。
「どうしたらいいかな……僕がナイフを突きつけられたせいでリューが袋叩きにあった訳だし」
「まずはここから抜け出す。アイツらの実力は大したことはないが、神経系の煙のせいで感覚がいつもより鈍いな」
「待って、僕はなめられてそんなに探られなかったから……」
かがんでコートの裏ポケットの中に入っていた折りたたみナイフを口で咥えてリューの方へ向ける。
リューが目で放れというので、放ってやるとリューが器用に口で受け取ったので驚く。
(普段からナイフ咥え慣れてるとかじゃないよな……?)
俺の疑問を知ってか知らずか、顔を傾けてナイフを手に落とすと縛られているロープを根気よく切っていく。
その間も見張りも帰ってこないところを見ると、油断しきって酒盛りでもしているに違いない。
「ロープが切れた! さすがリュー」
「……今のうちに行くぞ」
そう言うリューは実際かなりの怪我を負っているはずだ。
利き腕も僕を庇って負傷しているし、片足も僕の代わりに罠の虎挟みに挟まれて血が滲んでいた。
本来であればどれも回避できたはずなのに、全て僕が油断していたせいで足を引っ張ってしまった。
「僕は大した怪我もしてないけど、リューは歩ける?」
「お前も腕は麻痺している状態だろう。これくらいなら動けるから問題ない。素早くは動けないが」
何とか脱出できた僕らは、隠し持っていた緊急連絡用の魔道具で援軍を呼んで何とか敵を制圧し無事に依頼を終えることができた。
その後適切な治療を受けることができ、何とか起き上がることができるようになったところで隠れ家での安静命令が出た。
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