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第1話(2)
靴を脱いで、一瞬考えたけど店長のまで脱がせるのは面倒で足でドアを閉めてそのまま引きずる。
玄関入って真正面に見えるドアを開けると、タイマーでもかけてあるのかエアコンが効いていて心地いい。そこはキッチンと木製の2人掛けテーブルにイス、テレビのみのシンプルな部屋だった。
「ここに捨てていい?」
さすがに疲れて呟きつつ奥のドアを見つめる。
「…………あーぁ、僕って優しいねぇ」
ため息を吐きながら抱え直してそのドアに向かった。
思った通り、そこは寝室でやはりシンプルなベッドがあるのみ。ただ、190を超える巨体なだけあってそれはかなり大きなベッドだった。
投げてやりたいけど、腕も痺れてきてそのまま倒れるように僕もベッドにうつ伏せになる。
「あー、疲れた」
顔を動かすと呑気に寝ている男の顔があって、僕はじっとその顔を眺めた。
いつも不機嫌そうにしかめている眉、睨んでいるとしか思えない細い目、意外と柔らかそうな唇。
体を横に向けて手を伸ばそうとしたら強い力で抱きすくめられた。
「は?痛いんですけど?」
声を掛けてみても店長は寝息をたてるだけ。
「僕、帰れませんけどー?」
声量を上げると頭を抱きかかえられて、僕は舌打ちをした。
「寝てる時まで眉寄せなくてもいいでしょうに」
意外と高い体温を感じながら僕は何度目かのため息を吐いて仕方なく目を閉じた。
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