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10二人でえっち

 大きな手が体を這って、ゆるりと胸を撫でる。肌に触れられるだけでも気持ちが良くて、シグラの呼吸は荒くなっていく。  指先は焦らすように、胸の突起にはギリギリで触れない。胸元にキスをして跡を残していくくせに、真ん中だけは避けているようだ。 「……クガイ……違う、ねえ……」 「ん? なんですか?」 「何、じゃなくて……触って……」 「触る?」  クガイの指が突起に触れた。しかし触れただけだ。何をするでもなく、ただ撫でるだけである。 「いやだ……ねえ、クガイ」 「ふ、はは、かわい……」  突起を撫でていた指が、突然そこを強くつまんだ。  シグラの体に電流が突き抜ける。背が反って、体はすっかり強張っていた。 「すご……シグラ様はちょっと痛いのが好きなんですね」  強くつまんだかと思えば、今度は優しく吸い上げる。舐めて、舌先でいじって、甘やかな愛撫だ。  物足りない。もっと欲しい。そう思い始めた頃にはそこに甘く噛みつかれて、快感を叩きつけられる。  飴と鞭のような緩急をつけたいじられ方に、シグラの脳はじわじわととろけていく。 「んっ、クガイ、気持ちい、おっぱい、イイよぉ」 「んー……じゃあこっちは触らなくいい?」  ぴちゃぴちゃと音を立てて突起を舐められていたと思えば、クガイの片方の手が下腹に移動していた。  茂みを分けて、勃起したそこの根元に触れる。根元を焦らすように擦られると、下腹から快楽が広がっていくようだった。 「あっ、そこ、そこも……! クガイ……」 「両方がいいんすか? 欲張りですね」 「触って……んぅ、擦って、そこ、たくさん……」  根元だけだともどかしいのか、シグラの腰が揺れ始める。それを咎めるように胸の飾りを噛まれると、シグラはすぐに快楽に浸り動きを止めた。 「はっ、は、気持ちい、クガイ、もっと、もっとして、」 「注文が多い主人だなぁ」  クガイの指が、シグラの勃起した熱の先端に触れる。割れ目を一度なぞるように伝うと、それだけで甘やかな声が聞こえた。  クガイは唇を胸の飾りから離すと、今度は甘い音を漏らすその唇にキスをした。シグラはキスが好きだ。落ち着くと言っていたし、いつも求めてくる。  思ったとおり、シグラは突然のキスも受け止めると、すぐにクガイの動きに応えるように舌を絡めていた。 「ふ……ぅ、んっ」 「ん、ここ、いい?」  先端から溢れた先走りが滑りを広げていく。ちゅこちゅこと小刻みに先っぽばかりを擦られると、シグラの腰も小刻みに揺れていた。 「は、ん、いい、いい、それ、気持ちぃ」 「いいですよ、出しても」 「やっ……もっと、して……」  先っぽばかりでは足りないのか、シグラは泣きそうな顔でクガイに抱きついた。  可愛いおねだりだ。それにくらりとしながらも、クガイはあくまでも余裕を取りつくろう。 「言って……先っぽだけじゃ嫌だって。全部欲しいって、教えて」 「ん、欲しい、クガイ、全部して、触って、挿れて、おねがい」  膨らんだ先端は、そこばかりを擦られてすっかり赤くなっていた。しかしその痺れさえ快楽になるのか、シグラの目には涙が滲んでいる。体も断続的に跳ねているし、気持ちは良いのだろう。 「いいですよ。……シグラ様がそんなに言うなら」  すぐに距離を詰めて、ふたたび唇を重ねる。今度は優しいものではなく、奪うような激しいキスだった。  唇の隙間から漏れる吐息が熱い。脳が溶けそうなほどにはくらりとして、シグラはもう快楽に耐えることで精一杯だった。  口を犯されながら、勃起した熱を擦られる。先ほどよりも荒々しい手つきで、先っぽだけではなく全体を擦られてはシグラにもあっという間に限界が訪れた。 「ひっ! あ、んぅ!」  絶頂の嬌声は、クガイにすべてのみ込まれた。  シグラの腰が、びくびくと大きく震えている。クガイはちゅうと音を立てて唇を離すと、ようやく体を持ち上げた。 「エロいっすねえ……」  クガイの眼下には、すっかりとろけてふにゃりとしたシグラが、クガイに食われるのを待つように横たわっていた。  普段は性の欠けらも感じさせないシグラが、自分にだけはこんな姿を見せている。  そんな現実に興奮してしまえば、クガイの下腹の熱も膨らむ。  しかしまだだ。もっともっと快楽を教えて、溺れさせてやらなければ。  手についた白。それをペロリと一度舐めると、指をすぐに尻に埋める。 「あ……クガイ……待って、気持ちいの、まだ……」 「ここ、もう慣れましたかね」 「待って、気持ちくて、今それされたら、」 「どうなるんですか?」  ぬるぬると蕾を撫でていた指が、一気にナカに侵入した。一度アルファのモノをのみ込んだからか、そこはずいぶんと入りやすい。  容赦無く探られる動きにシグラはあられもなく脚を開くと、だらしない顔で必死に快感を受け止めている。 「ひ、ぐ! クガイ、そこ、気持ち、そこっ!」 「はいはい、ここですよね。いっぱい擦ってあげますね」 「ん! ああ、や、だめ、イく、そこばっかり、したら、イく」 「イってください。……後ろだけでイけたら挿れてあげる」 「いや、むり、触って、前、擦って!」  弱いところばかりを擦られて、シグラはすでに右も左も分からない。それなのに前には触れてもらえず、 出したいのにあと少しのところで出せなくて、我慢が切れたのかとうとう自らの手でそこに触れる。  しかし。 「こら、ダメっすよ」  すぐにそれをクガイに掴まれて、どうしようもなくなってしまった。 「やだ、イく、イきたい、いっ! ああっ」 「ほら、ほら、イけるでしょ。頑張ってください」  ぐちゅぐちゅと淫猥な音が響き、鼓膜さえも犯された。  自然とシグラの腰が浮く。内腿が強張って、快楽のことしか考えられない。  イきたい。出したい。けれど前からの刺激がない。精子がずくりと奥で煮えている。早く出てこいと思っても、シグラの思うようにはいかない。 「う、あ、イく、ダメ、イくイく、イく……!」  激しい動きに、シグラはとうとう限界を迎えた。  一際大きく、びくりと体を震わせる。触れられることもない先端からはぴゅっと微かな液が漏れたが、それは精液とは違うようだ。腰が揺れるたびに勃起したままのそこはゆらゆらと漂い、先走りを散らしていた。 「あっ、イった、クガイ、イったぁ……」  小刻みに跳ねるシグラの体は、上気して淡く染まっていた。  とろりと目尻が垂れている。快楽に染まる濡れた瞳が、クガイを誘うように見つめる。 「……ねえ、シグラ様」  唇を舐めたのは無意識だった。  クガイはすぐに自身の前を寛げると、すでに勃起したそれを取り出す。 「これ挿れたら、もっと気持ちいいですよ」  ずしりと重たく勃起したそこは、グロテスクに反り立っている。シグラはそれにじっと見入っていた。そこから与えられる快楽を、シグラはもう体の深いところで理解しているのだ。  見せつけるように数度擦れば、先走りでぬらりと光る。シグラはますます目が離せなくなったのか、うっとりとそればかりを見つめている。 「挿れていいですよね?」  尻の間で擦られて、そこのサイズを改めて感じる。シグラはそれに怯えることもなく、むしろ早く挿れてと言わんばかりに何度も何度も頷いていた。 「じゃあ……あげますね」  言うと同時に、クガイは腰を思いきり押し進めた。  蕾が広がる。クガイのモノをのみ込むために精一杯広がって、クガイを受け入れようとしている。しかしそれは規格外だ。クガイがローションを足して滑りを良くしてようやく、先っぽがナカにおさまった。  じわりじわりとナカを犯される。奥に侵食して、クガイのそこはナカのすべてを擦っている。  最初のセックスのときよりも奥に到達すると、クガイが長く息を吐いた。シグラを見下ろして、落ち着けるように頬を撫でる。 「……動いても?」 「……ん……いい、動いて……早く……気持ちいの、ほし……」  ずるりと腰を引くと、ナカからクガイのモノが出てきた。この小さな穴にどうやって入っているのかは分からないが、そんな光景にも煽られて、すぐにそれをナカに戻す。  やがてそれは早い律動に変わり、シグラはナカから覚える快感にだけ集中していた。 「は、あっ、これ、クガイ、気持ちい、いいっ」 「あー、ほんっと狭い……今日ちょっと早いかも」  たっぷりと垂らしたローションが、最初よりも粘ついた音を立てていた。ぶつかる下腹は糸を引いて、出たり入ったりを繰り返す。早い動きだ。それにシグラも体をしならせて、必死に快楽に耐えているようだった。 「シグラ様、ねえ、どっかに行くなんて言わないでくださいよ」 「あ! い、や、気持ちい、クガイ、もっと、もっと、」 「こんな気持ちいことやめられないでしょ? ここに居ないとなくなりますよ?」  奥を突きながら、クガイはシグラを抱きしめてキスを繰り返す。 「ん……は、ねえ、ここにずっと居て。いっぱいエッチしよ。気持ちいこと好きでしょ」 「ふ、あ、好き、すきぃ、もっと、あん、ぅ」  腹の奥で淫猥な音がする。どこもかしこも犯されて、シグラの頭はもう真っ白だった。  もっと気持ちよくなりたい。もっともっと気持ちよくしてほしい。本能が求めるままに従順に受け入れて、その快楽に流される。  クガイは存外容赦無く口内を貪っていた。舌を絡めて、舌裏をなぞり、口内を舐め尽くす。シグラの動きにも無視をして、欲望に従って動いているようだ。そんな中で腰を打ち付けられるものだから、シグラには快楽の逃し場所がない。  このままではイかされる。またナカだけで、あの痺れるような強烈な快感を叩きつけられてしまう。 「あっ、だ、したい、出す、あ、」 「ダメだって」  シグラが中心に手を伸ばすと、その手はあっさりと捕まえられてベッドに押し付けられてしまった。  射精の快感が欲しい。そう思うのに、クガイはくれない。涙を流しながらキスを繰り返し、ナカを犯される快楽に溺れながら、シグラはぐったりと力を抜いた。  瞬間。――腹の奥から這い上がった快楽が、シグラの頭の先まで突き抜けた。 「あっ! ん、イ、くっ……!」  シグラの締め付けに、クガイは眉を寄せて動きを止める。 「またナカでイったんですか?」  ぐり、と気持ちの良いところを押してやると、シグラの膝が大きくはねた。  うねるナカの快楽に耐えながら、クガイはふたたび体を起こす。  ピクピクと震えるシグラは、表情も快楽に溺れて締まりがなかった。唾液は垂れているし、涙も流れて見てもいられない顔である。  中心は震えるばかりでやはり白濁は出ていなかった。  クガイはそれを見て、悪い笑みを浮かべていた。 「あー、本当可愛い。……ベータとかもったいねー。オメガだったら番にしてやるのになぁ」  クガイが体を倒し、もう一度キスを――と、唇が触れ合う直前。  ガチャリと、部屋の扉が突然開いた。  ここにノックもなしに入ることを許されているのはクガイかレシアくらいなものである。そのため焦ることもなくそちらに目をやったクガイは、やってきたレシアを見てああやっぱりなと思った程度だった。 「っ、ヴィンスター……あなたまた……!」 「良いとこに来たな、レシア。ほらシグラ様、レシアが来ましたよ」  ずっぽりと入っているそこを見て、レシアはすぐに頬を染める。  レシアにはまだまだ刺激が強い。けれどどうにも目が逸らせない。  レシアが次に見つめたのは、射精が許されずに揺れている、シグラの勃起したそれだった。 「レシ、ア?」 「そうだ、シグラ様。あのチョーカーがちゃんと効果あるか、試してみますか」 「……ん、あ!」  背中からクガイに抱き上げられたシグラは、その微かな快楽にも身を震わせていた。  そんな反応からも、どれほどクガイに可愛がられていたのかが分かる。レシアは快楽に溺れるシグラを見つめて、ゴクリと喉を鳴らしていた。  シグラはふたたびベッドに下ろされた。今度は尻を突き出した体勢で、後ろから犯されることになるらしい。  繋がっている部分が良く見える。クガイはそこを見下ろして、一度大きく腰を引いた。 「あっ……クガイ……待って、イった、から……」 「うわ……すげ。入ってく」  引いた分だけ、押し戻す。  狭いナカに入っていくところを見ていれば、快楽のままに突き上げたい衝動に襲われた。  それでもクガイが動かないのは、レシアが見ているからである。  レシアの目はずっと、二人が繋がっている部分から離れない。じっくりと動けば動くほど興奮するのか、のみ込まれては出てくるそこから目が離せないようだった。  やがて、レシアの股間が隆起する。  それを認めたとき、クガイはシグラの両腕を掴み、上体をぐっと思いきり引き寄せた。 「シグラ様、前でイきたいですか」 「あっ……イきたい……イかせて……」  シグラの体が持ち上がったために、勃起したそこがレシアから丸見えだった。  すでに限界まで膨らんでいた。しかしクガイの言葉から察するに前でイっていないのだろう。それを理解した途端、レシアの後ろはじわりと濡れる。  今の状態で射精したなら、どれほどの精液が溢れるのか。量は。濃さは。粘度はどうだ。それを奥で出されたら、レシアはどうなってしまうのか。 「レシア」  それは悪魔の誘いだった。  クガイの目がギラリと光る。レシアを見て、物言わずに誘っている。  ――指なんかでは届かないところを、本物のシグラに突き上げてもらえる。  そんなことを思えば、レシアには逆らうことができなかった。

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