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16条件達成
シグラの部屋に移動してすぐ、スレイはベッドの側に一人用の椅子を持ってそこに腰掛けた。完全に観客スタイルである。にこにことしているから機嫌は良いのだろう。レシアは近くにいるけれど、服を脱いでいるためにまだベッドには上がりそうもない。
シグラはそんな確認をしながら、レシアと同じように洋服のボタンを外していく。
「途中で会った執事くんも混ぜれば良かったね」
「クガイは皿割ったとかでお説教中なんで無理ですよ。うちのシェフは怖いんです」
「ふーん……それは残念」
どうでもよさそうにつぶやいて、スレイは大きなあくびを漏らす。
これから目の前でおこなわれることなんてスレイにとってはお遊びのようなものであることを突きつけられているような態度だ。
「きみたちは淡白だね。服を脱がせたいとか思わないの」
「スレイが居なかったらしてたよ」
「気にしなくていいのに」
すべてを脱いだレシアがベッドに上がる。シグラも脱ぎ終えて乗り上げると、改めて体格の違いが明らかになる。
レシアはオメガらしからぬオメガだ。コンプレックスでもあるようで、だからこそ自分が抱かれることなんて諦めていたと寂しそうに語っていた。
レシアにとって、シグラとのセックスは彼の価値観を覆すほどのものだったらしい。だからこそこんな形でしてしまうことが申し訳ないのだが、そんなシグラの心情を察したのか、レシアがふっと柔らかく笑む。
「シグラ様……気にしないでください。どんな形であれ、あなたに触れられるのは嬉しい」
「……でも」
言葉を続けようとしたシグラの唇に、レシアがすかさず口付ける。そうしてシグラを抱きしめると、レシアはそのまま後ろに引っ張るようにベッドに横になりシグラに強引に押し倒させた。
ここまでされて、シグラが応えなければレシアが恥をかくだろう。
唇を割いて舌を差し込めば、レシアは喜んで受け入れた。もっと深くを求めて角度を変える。自身の口内を犯す舌にレシアも微かな声を漏らし、シグラを求めるように舌を絡めていた。
「は……シグラ、様……」
「ごめ……なんか、いい匂い……」
「私が……シグラ様を、欲しがっているからですかね……」
求めているから、シグラに伝わったのだろうか。そんなロマンチックなことを考えながら、レシアはゆっくりとキスを続ける。シグラは念のため、横目にスレイを確認してみた。しかし彼は飄々とした様子を崩していない。例のチョーカーをつけたままだからか、ほとんどフォロモンは漏れていないようだった。
シグラの手がレシアの胸の飾りに触れると、その体がびくりと揺れる。シグラよりも厚い体だ。それなのにこんなにも敏感で、そこを指先で弾いてみると微かに嬌声が聞こえた。
シグラよりも男らしいくせに、今はすっかり触れられることを待ち望む”女”。そんな姿を見下ろしていればたまらなくて、シグラはすぐに胸をつまんだ。
「んぅ!」
「痛いの? 気持ちい?」
「あ、く、気持ちい、です……」
つままれたり転がされたり、容赦のない刺激がレシアを襲う。両方の突起から痺れが生まれると自然と熱がめぐり、レシアの下腹ではゆるりとそれが首をもたげた。
シグラは気付いていたけれど、もちろん見ないふりをした。そうして胸に顔を近づけて、散々つまんだり転がしていじめたそこを、今度は優しく舌先で舐める。ヒリヒリとして敏感になっていたからこそ、訪れた柔らかな熱い感触にレシアは体をよじらせた。
「あ! シグラ様、う、っ、」
「んー?」
「ひぅ! か、まな……!」
時折甘く噛むと、レシアの胸も大きく震えた。
気が付けばシグラはその体をぎゅうと抱きしめて、必死になって胸を吸っていた。反応が可愛くて、もっとしてやりたくていじめたくてたまらない。じゅるじゅると音を立てて吸っていると、レシアの腰が微かに揺れる。
「すみ……ません……あ、もう……」
「まだだめでしょ。ちゃんと気持ちよくならなってからね」
「でも……挿れてほし……」
普段はキリッとしている顔が、今はとろりととろけていた。男らしい表情も体格もいつもと変わらないはずなのに、今はなぜか可愛く見える。シグラはそんなレシアに一度キスをして、今度は下腹の熱に触れる。
「んっ!」
「どっちが好き?」
逆手に下を扱かれながら、唇で胸の飾りを吸われる。
いやらしい音が聞こえる。だけどどこから聞こえているのかが分からなくて、それはレシアを昂らせるだけの材料になっていた。
「は、あ、シグラ様、気持ち、それ、そこ」
「どっち?」
「両方、両方、好き」
「ん、そっか」
少しだけ満足そうに微笑んで、シグラはすぐに甘く噛み付く。
これではまるで恋人同士のセックスだ。そんな認識に脳を溶かされそうになりながら、レシアには喘ぐことしか許されない。
実はレシアは最初にセックスをして以来、シグラにはずっと抱かれたいと思っていた。けれど二人きりになれる状況もなかったし、そもそもシグラは主人であるために自分から欲しがることもできないでいた。クガイのように積極的に迫れたなら良かったのだろう。しかしレシアは彼よりもずいぶん真面目に生きてきた人間で、受け入れられることにも慣れていないものだから余計に動けるわけもない。
それがこんな形で叶ってしまったのだ。理解は追いつかないのに、体は普段よりも感じてしまう。
「あ、ひっ、シグラ様、だめ、やめてください、」
レシアの突然の拒絶に、シグラはすぐに手を止める。
レシアの匂いにくらりと揺らぐ。なんとかレシアを見てみれば、彼も幾分とろけた顔で、緩慢な動きで起き上がった。
「私も……あなたに触れたい」
レシアが肩を押すと、起き上がったシグラはすぐに後ろに尻をついて座った。
その脚の間。ゆっくりとレシアの頭が下っていくのを、シグラはぼんやりと見送る。
「はっ……レシア……」
「んぶっ、はぁ、美味しいです」
「あ、やめて、煽らないで……ん、」
顔を揺らしながら、ぐぷぐぷといやらしい音を立ててそこを必死に唇で扱く。
口の中で大きく固く育っていくそれ。先走りが溢れるのを舌先に感じながら、レシアは今度、その下にある睾丸に触れる。
「っ……それ、すごい……」
痛くしないように、けれど弱すぎないように。レシアは手先の感覚に気をつけながら、そこを撫でては揉んでと楽しんでいるようだった。
「レシア、だめ、イく、イくから、止まって」
「ん、ぐぷ、じゅる」
「あ、だめ、だって……イく、気持ちいから……」
切羽詰ったような声が降る。そんなものを聞かされて、レシアが止まれるわけもない。さらに加速した頭はそれを喉の奥まで飲み込んで、絞るように口内を窄めていた。
もっと欲しい。もっと気持ちよくしたい。
シグラの手が、レシアの頭に添えられる。優しく撫でるような手つきにレシアはさらに昂って、空いている手を自身の後孔へと持っていく。
「イく、レシア、離して、レシア、あ、あっ」
微かに腰が揺れていた。シグラはレシアの口を性器と思って、射精しようとしているのだ。
シグラが、レシアの口に出す。そんなことを嫌悪するどころか早くくれとさえ思いながら、レシアは追い詰めるように思いきり吸い上げた。
もしもここが、自身のナカだったら。
すでに濡れている蕾。そこに触れていた指をナカに挿れて、シグラの腰の動きに合わせて浅いところを何度も擦る。
ぐちょぐちょと濡れた音がしていた。しかし指は止めることもできず、気持ちの良いところばかりを擦り続ける。
「イ、く! あ、ああ……レシア……」
内腿が震えて、体の強張りが解けていく。
喉の奥に精液が注がれる。それをすべて飲み干して、レシアは丁寧にそこを舐めていた。
「あっ、待って、レシア、イったばっかりで、そこは……」
「ん、ふ、まだ勃ってますね」
「……今度はレシアね」
形勢逆転と言わんばかりにレシアを押し倒そうとしたシグラを、ふたたびレシアが引き留めた。
シグラの体を倒して、上に乗る。すっかりとろけた表情のレシアにそんなことをされて、シグラの中心はさらに固くなっていく。
「重たいとは思いますが……」
「いや……やらしくてびっくりした。自分で挿れるの?」
「はい……」
シグラの上に座ると、ちょうどレシアの尻の間にシグラの勃起した熱が挟まった。
レシアが腰を大きく揺らす。それだけで尻に扱かれて、その快楽にシグラの膝がびくりと跳ねた。
「わ、待って、ヤバいそれ……やめて、レシア……」
「気持ちいいですか」
「っ、うん、いい、いいよ、気持ちい」
レシアの蜜液が絡みつく。先走りと混ざって粘度が増すと、そこからさらなる快楽が広がる。
早く挿れたい。挿れてほしい。こんな弱い快楽ではなくて、もっと強いものが欲しい。ぐらぐらとする思考の中で、シグラはそればかりを求めていた。
自然と腰が揺れた。けれどレシアは挿れてくれない。泣き出してしまいそうなシグラに気がついたのか、レシアは体を傾けると、一つ軽いキスを落とす。
「挿れますね」
すでに限界まで膨らんだ熱が、レシアの後孔にのみ込まれる。
先っぽが入ると、シグラの腰の奥がぶるりと震えた。ゆっくりと全体が包まれてすべてがレシアのナカにおさまれば、柔らかな肉壁がシグラのモノをきゅうきゅうと締めつけ、直接触れ合う感覚には言葉も出ない。
レシアの下で震えるシグラを楽しそうに見下ろすと、レシアは待つこともなく腰を持ち上げた。
「っ、あ! まっ……!」
「いつでもイってくださいね」
達したばかりで敏感になっているそれが、レシアの腰が持ち上がることで大きく擦れた。ねっとりと味わうように動き、先っぽはそこにひっかけたまま、今度はそれを押し込むように腰を落とす。
「ぅ、ああ……レ、シア……」
声がかすれた。情けなく震え、ゾクゾクと這い上がる快感に染められる。
レシアはリズム良く腰を浮かせては落として、絞るようにナカを締め付けてはシグラを追い詰めていく。
シグラのモノが奥を突くたび、頭の先まで一気に痺れが突き抜けた。もっと深くにと思うのにうまく動けなくて、レシアはもどかしい気持ちを持て余して腰を揺らす。
見下ろせば、獣のような顔で堪えているシグラが居た。快感と衝動に挟まれている顔だ。レシアは満足そうに微笑むと、自身の快楽も考えずさらに激しく抽挿を繰り返す。
「はっ、あ! レシア、気持ち、い、そんなにしたら、」
「出してください、あ、ほらっ、ほら、」
「ああ……イく、レシア、イく、や、待って」
下から突き上げてやりたいのに、シグラよりも体格の良いレシアに乗っかられてはうまく動けない。そのもどかしさがまた気持ちよくて、シグラは嫌だ嫌だと頭を振る。
「は、ああ、シグラ様、出して、ナカにください、ほら」
「あ、ぐぅ、っ! レシア、本当、むり、もう!」
快感に打ち震えるシグラを見下ろしていれば、レシアの興奮も上り詰める。とにかくイかせてやりたくてひたすら動いていたレシアは、ナカの熱が射精を始めたことに気付いて、ようやくその動きを止めた。
奥にシグラの精液が注がれる。よほど気持ちが良かったのか、シグラは肌をピンクに染めて、顔をそらして脱力していた。
「はぁ……シグラ様、たくさん出ましたね……」
レシアが腰を浮かせると、ぬぽ、とそれが尻から抜けた。
解放されたそこは、二度も出したというのにまだ力を持っていた。レシアの愛液と先走りでドロドロに濡れ、先っぽの剥けた部分はぬらりと光る。濃い匂いがする。それはシグラの雄の匂いなのか、レシアの後ろが疼くような匂いだった。
そこがピクンと目の前で跳ねると、レシアにはもう我慢もできない。ここを舐めしゃぶって綺麗にしたい。また口にシグラの精子が欲しい。本能的な欲望にしたがって顔を近づけると、寸前のところでシグラが座ったことによって引き離されてしまった。
「シグラ様?」
「次こそ、レシアの番ね」
「…………私、ですか?」
いったい何を言われたのかと。それを考える間もなく、迫ってきたシグラに逆らわないままにベッドに横たわる。少し横向きの体勢になったのは、その気迫に驚いて逃げようとした心があったからかもしれない。
次にはどうされるのか、見上げたレシアを静かに見つめ返していたシグラは、さっそくレシアの片足を担いだ。
「シグ、」
「奥まで、突くから」
「へ、う!」
焦らすこともなく、シグラは一気に突き上げた。
先ほどは触れなかった部分まで入っている。目の前が真っ白になる感覚を覚えて、レシアは声にならない吐息を吐き出した。
しかしシグラは待たない。少し前傾になると、最初から思いきり腰を打ちつけた。
「あ! や、シグラ様、そこ、そこは……!」
「は、あ、締まる、レシア、気持ちいよ、」
腰を揺らすたび、ナカに出した白が溢れた。シグラはそれを見下ろして、興奮してさらに腰を打つ。
先ほどとは比にならない濡れた音が響いていた。ナカに出したからだろう。さらにレシアの蜜液が溢れて、シグラの先走りと混ざって何倍にもなる快楽を生み出している。
気持ちがいい。早く射精したい。
シグラは快感に溺れているレシアを押さえつけて、ひたすら奥に叩きつける。
レシアが一際甘やかに喘ぐ場所を見つければ、そこばかりを突き上げた。ナカが締まって精子を誘う。半ば叩きつける形で抉っていると、レシアの足先がびくびくと跳ねた。
「ふ、う! ぐ、待って、まっ、シグ、様、」
「レシア、イく、イく、」
「まっ……で……!」
そんな深くなんて知らない。暴かれたことなんかない。レシアは初めて奥の快感に襲われて、どうすれば良いのかも分からない。
シグラの動きは容赦なく、奥に叩きつけている。ぐぽぐぽといやらしい音を立て、打ちつけては溢れた白濁を飛び散らせても尚やめない。弱いところばかりを突かれてレシアは狂ってしまいそうなのに、シグラは全然手加減もしない。
「あっ、イく、レシア、締まる、出すよ、あ、ああ」
「だ、め、今、ナカ、出したら……!」
「イく、レシアも、ほら、イく、」
張り詰めたレシアの中心を、シグラが激しく擦り上げる。それにまた追い詰められて、レシアの体が大きく跳ねた。
「む! り、も、シグ、ラ、様!」
「う、わ、っ!」
強烈な締め付けに襲われて、シグラは一番奥で精を吐いた。
体を丸めて体を震わせながら、射精の快楽に集中する。その下でレシアは自身の白濁に濡れながら、ぐったりと力を抜いていた。
「はっ、あ、シグラ様、待って……動けな……」
「ごめん、レシア……気持ちよくて、止まれなかった……」
「ん……嬉しいです……」
ついばむキスを繰り返し、互いをねぎらうように力を抜く。
ベッドの上で重なり合う二人はぴったりとひっついたまま、しばらく余韻に浸っていた。
「はー……いいセックスが見れたなぁ」
スレイの声がして、二人はようやく我に返る。自慰をしていたのか、勃起して濡れた自身の性器を取り出したスレイが、熱っぽい瞳を二人に向けていた。
「さて、じゃあ次はオレの番ね。……オメガは抱かないから、きみを抱かせてよ」
シグラの背後にやってきたスレイは、自身の指を充分に舐めて、それをシグラの蕾に挿れた。
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