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後日談:優しい時間

 キスを繰り返していたのが、いつの間に押し倒されたのか。  劉蓮は自身に乗り上げる余裕のない男を見上げて、後ろから蜜液が溢れていることを自覚した。 「可愛いな、劉蓮」  目尻をたらす劉蓮に、ゼレアスは嬉しそうに微笑みかける。  服を脱がせる手つきはずいぶん優しかった。首筋や鎖骨にキスを落としながら一枚ずつはだけて、あらわになった肌に吸いつく。ゼレアスの手が滑って下腹にやってくると、劉蓮は自然と触れやすいようにと脚を開いていた。 「……触れてほしい?」 「うん……触って……」  劉蓮の胸の飾りにキスをしながら、その手を中心に伸ばす。  先っぽに指先が触れただけで、劉蓮の体が大きく揺れた。朝からずっとセックスをしているから敏感になっているのだろう。もちろんゼレアスは匂いで気付いていたから、その反応にくすりと微笑む。 「朝からどれくらいした?」 「あ! ぅ、わから、な……」  感触を味わうように先っぽを擦っていたかと思えば、ゼレアスはすぐに全体を扱き始めた。  ゼレアスの口が、指が、息遣いが、すべてで劉蓮を追い詰める。先走りが広がり、ゼレアスの手が動くたびに甘やかな音が聞こえてくるのでさえ耐えられない。  そんなことさえ快楽に溶けてしまうのだから、劉蓮はもう快楽の虜になってしまったのか。  チロチロと舌先で胸の先端を舐められて、中心を扱かれて、今日のどのセックスよりも緩やかであるこの「普通」さが、劉蓮にはもどかしくて仕方がなかった。  やがてゼレアスの空いていた手が、劉蓮の後孔に忍び込んだ。そこはすでにどろりと濡れて、ゼレアスの指をすんなりのみ込んでしまう。 「劉蓮……ここにどれほど精子を注がれたんだ?」 「ん、ああ、たくさん、みんな、たくさん、出してくれて、」 「そうか。負けていられないな」  ゼレアスは一度体を起こして、すぐに劉蓮の体をひっくり返した。うつ伏せになった劉蓮はすぐに横目に振り返る。その目は挿入を期待していたが、ゼレアスはただふっと笑うばかりである。 「すごいよ、劉蓮。……こんなに赤くなって……ずいぶん可愛がられたんだな」  尻を開いて、蕾を見下ろす。蜜液の溢れるそこは今朝からセックスをし続けているからか、すでに赤く腫れぼったくなっていた。  ゼレアスの指が軽く蕾を引っかいた。たったそれだけのことで劉蓮の体はびくりと跳ねて、さらに求めるように腰を突き出す。 「ゼレアス、挿れて、早く……お願い……」 「まだ」  ゼレアスの顔が蕾に近づくと、伸びた舌がそこにぬるりと入り込んだ。  蜜液と精子の濃い匂いがする。そんな混じり合った匂いにも興奮しながら、ゼレアスはナカを解すように舌を大きく動かした。  粘ついた音と感触。わざと聞かせるようにナカを探り、溢れる蜜液を飲み込んでいく。 「あ……ん、ゼレアス……もう、それ……」 「ノットは挿れた? 子作りしたのか?」 「ん、うん……みんな、奥まで挿れて、たくさんナカ、に、」 「それなら、俺の精子も飲んでくれ」  ずるりと舌を引き抜いて、ゼレアスは前を寛げた。  そこはすでに勃起しているようだった。数度擦るとさらに太く変わり、振り返って見つめていた劉蓮の瞳も期待に濡れる。 「本当に不思議だな……こんな小さなところに、これが入るなんて」  ぬるぬると蕾に自身を擦りつけながら、ゼレアスはじっくりとそこを見下ろす。  両側から開いているからか、先っぽが蕾に引っかかった。しかし入ることはなく、弾かれてふたたび擦りつけられる。  劉蓮の体が震える。腰が揺れて、全身でゼレアスを求めているようだ。 「あ、ゼレアス、早く、早くして、挿れて、早く、」 「こら、劉蓮……ああ、待て、入る……」  我慢ができなくなった劉蓮が、とうとうゼレアスのモノを掴んで自身の蕾にあてがった。そうして尻を押し付ければ、ゆっくりゆっくりとナカに入っていく。 「ッ……劉蓮……熱い、気持ちいいよ……」 「ふ、う……あっ」  とん、とノットに触れたところで、劉蓮はようやく動きを止めた。  動いてもいないのにナカがうねり、ゼレアスのモノを絞っていた。ゼレアスの精子を求めて必死に射精をさせようと、劉蓮の本能がそうさせているのか。  溶けてしまいそうな快楽に、ゼレアスは動くこともできない。  そうしてゾクゾクと這い上がってくる射精感に耐えていると、劉蓮が突然腰を引いた。 「あっ……劉蓮、待ってくれ」 「や、だ……早く、動いて……」  とん、とふたたび尻とノットが触れ合う。  一度擦られただけでも、ゼレアスは痺れて動けない。直接擦れる肉壁が柔らかにゼレアスの中心を食み、強烈な快楽を生み出している。  しかしそんなことも関係がないのか、ゼレアスが快楽に浸っていても容赦なく劉蓮は腰を揺らし始めた。 「あん、ゼレアス、奥、気持ちい、ナカぁ」 「……っ、ああ、ま、て、本当に……はっ……」 「ねえ、突いて、思いっきり動いてぇ、お願い」  ぐらぐらと、ゼレアスの理性が大きく揺れていた。  宝物のように大切にしたいと思うのに、乱暴に犯してやりたくてたまらない。  ナカに何度も精子を塗りつけて、誰よりも早く孕ませてやりたい。誰よりも強く独占したい。自分だけのものにしたい。いいやダメだ。大切にすると決めたじゃないか。劉蓮はゼレアスにとってかけがえのない相手で、唯一の存在である。丁寧に大切にしなければ、壊してからでは戻らない。だけど劉蓮が願っている。ゼレアスを欲しがっている。ゼレアスも与えてやりたいのに我慢をしているなんて、おかしな話ではないか?  そうだ。おかしな話だ。  どうして劉蓮とゼレアスの意見が合致しているのに、ゼレアスは我慢しているのだろう。  思い至った瞬間、ゼレアスは劉蓮の腰を掴んでいた。そうして思いきり奥まで突き上げると、劉蓮の背が柔らかく反る。 「か、は……ゼレア、」 「思いきり動くぞ」  ごつごつと、繰り返し奥を穿つ。  ゼレアスの動きは宣言どおり躊躇いもなく、気遣いもない。  肉壁を割いてその熱を直接感じてしまえば、余裕なんか一気に吹き飛んだ。 「はぁ、劉蓮……ここか? ここが気持ちいい?」 「ぐ、ぅ! 全部、全部、気持ちい! あ、ん!」 「そうか、全部か。可愛いな、劉蓮」  劉蓮の背にキスを落として、ゼレアスは尚も腰を打ち付けた。  それにしても、長いソファとはいえ男が二人居れば狭いものである。多少の動き難さを覚えてはそればかりが気になり、ゼレアスはすぐに背後から劉蓮を抱き上げた。そうして自身がソファに座ると、挿れたままで劉蓮を自身の上に座らせる。 「ひ! お、ぐ……に……!」  劉蓮の背が震える。それをしっかりと抱きしめたゼレアスは、待つこともなく腰を突き上げた。  奥をえぐられて、劉蓮の視界がじわりと滲む。背後のゼレアスがそんな劉蓮に気付くこともなく、ゼレアスはただ欲望のままに繰り返し奥に叩きつけた。 「ふ! ぁ、ぐ、待っで、ゼレアス、奥、お、くに」 「好きなんだろう?」 「や、あ! むり、気持ち、い、おかし、これ、気持ちい!」 「ああ……俺も、いいよ」  ゼレアスに抱きしめられているから逃げることもできなくて、強制的な快楽に劉蓮はもう狂ってしまいそうである。  弱いところばかりを突かれては全身が痺れて動けない。すっかりゼレアスに体を預けていた劉蓮は、時折大きく体を跳ねながらも快楽に溺れていく。  ぼんやりとする思考の中、中心にゼレアスの手が触れた瞬間、一気に体を強張らせた。 「ん、は! や、それ、したら、ぁ!」 「気持ち、いいか」 「いい、気持ちい、やだ、たすけて、」  後ろを深く突き上げられて、前まで擦られては我慢もできそうにない。  劉蓮は頭を降りながらもゼレアスにもたれて、ナカを思いきり締めつけて庭園に向けて精を放った。 「あ! ああッ! ん、気持ちい、あっ、んぅ」  白濁が芝に落ちる。腰を突き上げる動きに夢中になっていたゼレアスはそれに気付かなかったのか、射精をしたのに手を離さない。それどころか先ほどの締め付けでさらに射精感が高まったようで、打ち付ける動きが激しく変わった。 「ああ、イく、劉蓮、出すぞ」 「っ、いや! だめ、イった、イったのに、イく、出る、やぁ!」 「奥に、出す。俺の子を、孕めるように……ああ、ダメだ、気持ちがいい」 「むり、イくイく、ゼレ、あ、止まって、ぇ!」  最奥を突き上げる動きに、とうとう劉蓮の先端からは透明の液体が吹き出した。そこで劉蓮をロックしたゼレアスが、ようやく射精を開始する。  劉蓮の体から一気に力が抜けて、だらしなく脚を開いたままでびくびくと震えていた。 「……は、大丈夫か、劉蓮……今のは……」  ルジェのせいで潮を吹くクセでもついたのだろうか。最初ほど時間をかけず、劉蓮は芝を広範囲で濡らしていた。  しかしそんなことをゼレアスが知る由もない。何が起きたのかは分からなかったが、劉蓮が気持ちよさそうだから良いかと愛おしげにその背にキスを落とす。 「……劉蓮……この世界に来てくれてありがとう」  小さな小さな言葉だったが、劉蓮にはしっかりと届いた。  軽く振り返ると、そこにゼレアスの顔がある。どちらともなく顔を近づけて、すぐに深いキスに変わった。

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