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揺れる思い②

「ヒーナ!一緒に帰ろうぜ」 「おう」  クラス替えから3週間。やはりとゆうか、なんとゆーか、俺は自然とタキと仲良くなった。  とゆーか、出会ったときから仲良くなれそうな気はしていた。くったくのない、その笑顔を見たときから。  やっぱりタキはイヅルによく似ていて、一緒にいる時間が増えれば増えるほどイヅルと一緒にいるような気分に陥っていた。  席も近くだし、名簿でもすぐ前と後ろ。自然につるむ時間が増えてもおかしくはない。  講義にしてもタキを含む数人で行動することが多くなった。まあ、それはごく自然なことだった。  反対にクラスの違うイヅルと会う時間は学校では全くといっていいほどなかった。  たまに休み時間にすれ違うくらい。  時間を合わせなければ偶然に会うことなんてゼロに等しかった。  今まで同じクラスのときだって、イヅルといる時間なんてほとんどなかったんだ。クラスの離れた今となっては仕方のないことなのかもしれない。  でも…… 「あ、タキ、お前はいいのかよ。部活。今日大事なミーティングあるって……」 「いいの、いいの。それより付き合えよ、ヒナ。最近部活ばっかで気がつまっちゃってさ」 「いや、俺はいいんだけど……」 「よし!んじゃ、決まりな」  嬉しそうに振り返る笑顔。  南から聞いた話によると、タキは実力はあるけど、こうゆうトコもあるらしくて、あまり部活時間以外のミーティングや活動には積極的に参加しないらしい。  なんでか聞いたら、本人はそんなつもりはないらしい。ただ、気分じゃなかったとか、時間を忘れたとか、寝てたとか……そんな理由だって。  まあ、でもそれもイヅルとのレギュラーの差になってんじゃないかって話だ。 「なんだよ、ヒナ?あ、さてはまた南からなんか聞いただろ?」 「いや、別に。ただ、お前だけさぼって大丈夫なんかなって思ってさ。レギュラーなれなくなっちまうぜ?」 「なんだよ、そんなことか。いいんだって別に!」  カバンを手にとったタキが俺のカバンももう片方の手にとる。 「バレー好きだけどさ、そんなにバレーだけに人生捧げる気はないし、やりたいときにやりたいことをやる!レギュラーとれなきゃ俺にそこまでの実力がないだけだしな。てかさ、毎日キツイ練習に身を捧げてるんだし、たまには息抜きしたっていいじゃん?」  ニコリと笑ったタキにハイと、カバンを渡される。  それを見ていると思ってしまう。  ……イヅルもこんな風に考えられるヤツだったらよかったのに。  イヅルは真面目だ。  バレーのスポーツ推薦で学校にきているんだし、サボったりすることができないのはわかるんだけど。ただ、何をしても部活第一で、どんなに疲れたりしてもめったに休むことはない。  悪いコトではない……けど  たまにはハメをはずしたっていいんじゃないかって、そう思う。  なんだか、タキがイヅルとは別のもう一人イヅルのように感じて。  変な言い方だけど、もう一人。別のイヅルがいるみたいだった。  こうだったらいいのに、とか、ついついそんなふうに思ってしまう、俺が感じるイヅルの足りない部分を埋めてくれるような……そんな感じ。  いつもそばにいて、近くにいてくれる存在。  ついつい、そんなことを考えてしまう自分が心底嫌になる。  なんて俺は弱いんだろう。  離れていると、気持ちに焦りがでてしまう。  どうしても不安になってしまうんだ。 「さて行くか」 「ん」  そんなんじゃないのに。  たんなる友達なのに。  似ているタキの存在に甘えてしまいたくなってしまうんだ。  イヅルの事は好きだ。大好きだ。  その気持ちはまったく変わりようがない。  でも……好きなのに会えない寂しさ。それがどうしようもなくツライ。寂しい。  ーーそれでも耐えられた  1週間に1度の休みには部活がなければ会えたし、学校帰りや休み時間。そうした時間に少しだけでも会うことで満たされることができていたんだ。  ……ちょっと前までは。 「ヒナ、ドコにいく?」 「んー、お前の行きたいとこでいいよ」 「んじゃ、ちょっと本屋寄りたいからさ。それからゲーセンでもいっか?」 「おう!」  ……タキと一緒にいる時間は楽しい。  南やダイチとも遊んだりするけど、ソレとはちがう。  タキはイヅルと一緒だから。  タキと一緒にいるとイヅルがいてくれているみたいで。イヅルと遊んでるみたいで。  『一緒にいる時間』がつくりだす安心感に慣れてしまった俺は、この時間を幸せに感じて仕方がないんだ。  ……本当に自分はいったい何をしていて、何がしたいんだろうと思う。 「ヒナ!お待たせ!」 「ッ!」  タキが肩に手を置いた。  なんでもない、自然な友達の仕草で。  ……なのに 「ヒナ?」 「あ、ああ、行くか!」  俺は心臓が飛び出るんじゃないかってほど驚いて、おかしいくらい不自然にその手を払った。  急に顔が熱くなり、バクバクと鼓動が高鳴り続けていた。  ……それがどうゆうことなのかは薄々、感づいていた。

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