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勃たぬなら

 ずっと憧れていた、田橋(たばし)さん。  最初は純粋に、上司として好意を抱いていただけだった。  だけど、いつの頃からだろう?  彼の事を、性的な目で見るようになったのは。  学生時代は野球ばかりしていたらしく、ほどよく筋肉がついた体は、とっても美味しそう。  俺よりも大きな彼の体を、ベッドの上に組み敷いてめちゃくちゃに抱き潰したい。  そんな風に思っていた彼から飲みに誘われ、二つ返事でお供をしたら、思わぬ告白をされた。 「なぁ、木元(きもと)。  やっぱり勃たない男って、役立たずなのか?  プロポーズしようとしてた、彼女にもフラれるし。  そんなにセックスって、大事か!?」  まだほとんど素面だというのに、なんつーディープな話題を振ってくるのだ……。  それだけ俺の事を信用してくれているのだろうとは思うものの、なんとも複雑な気持ちになった。  しかしこれは、ある意味チャンスだ。  勃たぬなら、勃たせてみせよう田橋ジュニア。  とはいえ俺はバリタチなので、彼のモノが勃たなかったところで何も困りはしないワケだが。 「うーん、そうですねぇ。  無くてもいいっちゃいいかもですが、性生活の不一致が原因で別れるカップルも、意外と多いらしいですよ」  にこにこと邪気のない笑顔で、トドメを刺しに掛かる俺。  だけど田橋さんはそんな思惑にまったく気付く事なく、涙目でそろりと俺の方を見上げた。 「そう......なのか?  彼女の事、嫌いになったワケじゃないんだよ?  でもあの子、性欲がめっちゃ強くて。  一晩のうちに何度も求められるうちに、いざヤろうとしたら全然勃たなくなっちゃって。  はぁ……一生このままだったら、どうしよう」  可愛いなぁ、田橋さん。  だけどそんな性欲お化けの癖に受け身な女、やめて正解だ。  俺ならもっと田橋さんの事を気持ち良くしてあげるし、ずっと快感だけを感じさせてあげる。 「一生は、困りますね。  ねぇ、田橋さん。……なら俺と、練習してみます?  俺ね、良い方法しってるんで、手伝ってあげますよ」

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