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第1話 お見合い?

おれ、おおきくなったら、にーちゃんのおよめさんになるんだーーー・・・・・・。 ーーー・・・・・・はは、それは楽しみだね。 俺たちの両親が亡くなったのは、俺が2歳、兄貴が8歳のときだったらしい。俺は小さすぎて両親の顔も覚えてなければ、亡くなったときのことも知らない。 ただーーー・・・・・・。 覚えているのは、大企業の会社の社長と社長婦人の祖父母に引き取られたこと。祖父母が両親の代わりに俺たち兄弟を育ててくれたこと。 物心ついた頃には、両親がいないことをからかわれたりして幼稚園や学校から帰ってから祖父母に隠れてよく泣いていた。 そんなとき、いつも兄貴が俺を慰めてくれていて、少し歳の離れた兄貴が頭をよしよしと撫でてくれるのが好きだった。 にーちゃんとずっと一緒にいたい。 幼い頃の俺は本気で兄貴と結婚しようとしていた。 ーーー・・・・・・が、そんな考えも大きくなるにつれてもちろん薄れていって、小学生のときには普通に初恋も経験したし、中学生のときには生まれて初めての彼女もできた。 高校に入って半年たったとき、俺は衝撃的な光景を目の当たりにして、それから兄貴とどう接していいのかわからなくなった。 兄貴は大学に入るときにひとり暮らしを始めた。 ある日、たまたまその近くを通って帰宅していると、兄貴のマンションの辺りに二人の男性が親しげにしていた。背が高い方の男が低い方の男の頭を撫でたり、肩や腰を抱き寄せたりしていた。キスでもしそうなくらい、近寄ったりもしていて、俺はただ何となく目が離せなくなってしまった。 その時、ふと、背の高い男が振り返った。 ドクンーーーと、驚きなのか、よくわからない鼓動が鳴った。 ーーー・・・・・・兄貴。 振り向いた男は久しぶりに見る兄貴で、俺がわかったのか、ほんの少しだけ微笑むと、すぐまた隣の男へ視線を戻し、そのまま男の腰を抱きながらマンションへと入っていった。 俺、同性愛者(ゲイ)なんだよねーーー・・・・・・。 後々聞かされたそのことに対して俺は何て答えたんだっけ。 ピピピピピーーー・・・・・・。 鳴り響いた音に俺は布団からモゾモゾと手を出し、スマホのアラームを止めた。 午前5時。 うーん、と伸びをしながら、ベッドから降りる。 水を一杯飲んでから、顔を洗い、適当に朝ごはんを作って食べる。洗濯をして、天気によって外や中に干し、身支度を整える。これが俺の日課。 何か、懐かしい夢を見てた気がするんだけど、思い出せねえ。 スーツに着替えながら思い出そうとしてみるが、どうしても思い出せない。 まぁ、そのうち思い出すだろうと、ネクタイを締めジャケットを羽織る。 カバンの中から手帳を取り出し、今日の予定を確認する。 今日は会長との会食かーーー・・・・・・。 ーーー・・・・・・これは、あれだろうな。 思わず苦笑いを浮かべ、車と家の鍵を手に取り、戸締まりをしたら家を出る。 マンションの地下にある駐車場から一応、公用車として与えられている俺の車に乗り、そのまま社長宅へ向かう。

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