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第一章・4

 鉛筆を走らせながら、哲哉は独り言のように話した。 「君は、この私の所有物だ。勝手な行動は、慎むように」 「……」 「解ったら、返事を。必ず、だ」 「は、はい」  哲哉の目は、スケッチブックを見たままだ。  ただ、淡々と今後の玲衣について話した。 「私が仕事をしている時間は、屋敷内であれば自由に過ごしていい」 「はい」 「身の回りのことは、使用人の池崎(いけざき)に任せてある。何かあれば、彼を頼れ」 「はい」  そこでようやく、哲哉は顔を上げて玲衣の方を真っ直ぐ見つめた。  眼光に、射られるかのようだ。 「立って。後ろ向きで、首をこちらに捻りなさい」 「はい」 (この人は、僕を絵のモデルとして買ったのかな)  そう油断し始めた頃、哲哉はまた表情のないまま玲衣に命じた。 「私のことは、哲哉さま、とでも呼ぶといい」 「はい」 「今晩は、君を抱く。準備をしておきなさい」 「……はい」  やはり、そういったことも含めて、玲衣は哲哉に買われたのだ。  唇を薄く嚙み、玲衣は耐えた。

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