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第一章・7

 バスから上がった玲衣を、池崎が待っていてくれた。 「パジャマとガウン、用意しておいたから」 「ありがとうございます」 「今日は、夜伽があるの?」 「はい……」 「じゃあ、哲哉さまの部屋へ案内するね」  のろのろとパジャマを着る玲衣の姿は、はかなげだ。  気が進まないに違いない。  池崎は、そんな玲衣に声を掛けた。 「哲哉さまは、孤独な方なんだ。よろしく頼むよ」 「孤独?」  そういえば、哲哉以外の家族がいる気配もない屋敷だ。 「ご両親を、事故でいっぺんに失くされてね」  莫大な遺産を元に、今は投資で稼いでいるという。 「お金は余るほど持っているけど、愛情は希薄な人なんだ」 「そうだったんですか」 「君みたいに、モデルを今までも受け入れて来たけど。皆、逃げ出しちゃって」  僕も、逃げ出したくなるのかな。  だけど……。 『君はよく食べて、もう少し体を作った方がいい』  この言葉だけで、玲衣は嬉しかった。  彼の傍に、居たいと思った。 「僕は多分、大丈夫と思います」 「よろしく頼むよ」  そして玲衣は、哲哉の部屋のドアをノックした。

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