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第二章・2
「本当に、経験はあるのか?」
「あ、あります」
「例えば? どんな男が、どういう風に君を抱いた?」
「……」
「返事はしろ、と言ったはずだ」
玲衣はうなずくと、小さな声で話した。
「初めては、10歳くらいの頃です」
父に、犯されました。
その言葉に、哲哉は眉根を寄せた。
息子を売るような外道とは知っていたが、まさかそこまでとは。
後は、淡々と話す玲衣だ。
そのうち、父が斡旋した男たちに、売春させられたこと。
代金はもちろん父の懐に入り、満足な生活費はもらえなかったこと。
ついには、借金の返済のために、売りに出されたこと。
涙をにじませながら語る玲衣を、哲哉は思わず抱き寄せていた。
「もう、いい。もう何も、話さなくていい」
「哲哉さま」
「今日からここが、君の家だ。何も心配しなくていい」
「ありがとうございます」
玲衣も、知らず知らずのうちに、哲哉の体に腕を回していた。
抱きしめ、そのぬくもりを全身に感じた。
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