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第四章・7

 ベッドの上の哲哉は、紳士だった。  優しく玲衣を横たえ、その目を覗き込んだ。 「本当に、いいんだな?」 「はい」 「途中で嫌になったら、言うように」 「はい」  後は、優しくキスをくれた。  コニャックの残り香のある、大人のキス。  玲衣は、一気にのぼせ上った。 (こんなキス、初めて)  父の連れて来た客は皆、貪るように唇を蹂躙してきた。  しかし哲哉は、ただ柔らかくリップを食む。  舌も無理やり咥内にねじ込むのではなく、そっと忍ばせてきた。 「ん、ふぅ。はぁ、んん、ん……」  玲衣は夢中で、哲哉の頭をかき抱いた。  髪に指を差し入れ、自ら舌で彼を求めた。  やがて哲哉は玲衣から唇を離し、少し微笑んだ。 「キスが、上手だな」 「ごめんなさい」  複数の男たちに汚されてきた、この体。  玲衣は、そこで初めて恐れた。 (哲哉さん、僕のこと嫌いに……)  だが、哲哉は笑顔のまま言った。 「キスの巧い子は、好きだ」 「ありがとうございます」  そして、その大きな手のひらで、玲衣の髪を撫でてくれた。  熱い夜の、始まりだった。

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