1 / 8

第1話

アシスタントの1人が就職活動をしていたが、無事に就職先も決まり、すっかり仲間となった他のアシスタントと共に軽い打ち上げを兼ねた送迎会中だ。 とはいっても、俺の住む職場も兼ねたアパートの一室。テーブルにはコンビニで買い揃えたビールやハイボール、おつまみ類が乱雑に置かれている。 俺、西野一輝、23歳。職業、漫画家だ。 「にしても、大地、就職先が決まって良かったな」 嫌味でも皮肉でもなく、同じくビールを傾けている大地を見ながら俺もビールを飲んだ。 「はい。でも、すみません、アシスタント...」 「ああ、それなら大丈夫。編集が新しいアシスタントを宛てがうってさ。彼女の為にもお前も頑張れよ」 「はい、ありがとうございます」 俺の笑顔に大地も安堵したのか強ばった顔が綻んだ。 「にしても、新しいアシスタントってどんな人なんですかね?」 大地の隣に座る、同じくアシスタントの猛がさきいかを齧りながら尋ねた。 不意に編集からの忠告めいた通話が脳裏を掠めた。 『新しいアシスタント。気をつけてくださいね、西野先生』 『気をつけるってなにを?』 それ以上は編集の村瀬は口を噤んだ。 ...どうヤバい奴なんだろうな....。 「どうしました?先生。険しい顔してますけど....」 俺の不安が伝わったのか、猛も何気に不安げだ。 「え、あー、いや。どんな奴だろうな。大地みたいに一緒にやりやすい奴だといいけど」 その場にいた俺を除く4人が一斉に、ですよねー、と声を揃えた。

ともだちにシェアしよう!