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第2話
「んー!じゃ、ひとまず、休憩すっか」
俺は原稿用紙が乱雑に並ぶデスクでうんと背を伸ばす。
なにしろ、締め切りまでほぼ寝る暇もなく、アシスタント達にベタ塗りやら風景など手伝って貰いながらも、休み無しでデスクに座っていたら腰どころかケツまで痛くなる。
「じゃ、俺、コーヒー煎れますね」
嘉之こと、ヨッシーが3人で囲んでいるテーブルから立ち上がりキッチンに向かう。
「明日ですよね?新しいアシスタント来るの」
「ああ、そう聞いてるけど」
悪い、とヨッシーからカップを受け取り、コーヒーを啜る。
そして、ひと休憩入れて、また全員がそれぞれ俺は1人デスクに、3人はテーブルの原稿用紙に齧り付く。
「洋太、ここ、ベタ頼む」
用紙を手渡し、俺もまたペンを走らせる。
皆、一心不乱。
3人とも、いずれはプロの漫画家を目指し、自身でも漫画は描いてはいるが、俺にとっては頼もしい弟たちみたいなもん。
仮眠を取り、朝。
軽く朝食を取り、全員が原稿を仕上げていきながらも今日、訪れる新たなアシスタントを意識しているのがわかる。
いつもより、口数が少ないせいだ。
不意に玄関のチャイムが鳴った。
一斉に3人が顔を上げ、俺を見る。
思わず、俺が頷くと3人も合図かのように俺を見上げたまま相槌を繰り返す。
玄関のドアを開けると、視線を落とした先に少年が微笑んでいた。
「.....」
「中田寛人です。今日からお世話になります、よろしくお願いします」
深々と彼、寛人は頭を下げた。
身長は160あるかないか、随分、幼い顔立ち。
「....高校生?」
思わずついて出た。
「え?あ、よく間違われます、童顔なもので。これでも19です」
にっこり、寛人が微笑み、
「これ、良かったら、皆さんと」
菓子折りだろう、紙袋を手渡された。
中を覗くと、老舗らしき、饅頭のようだ。
「気を遣わなくても良かったのに」
再び、にこっと寛人が可愛らしい笑顔を見せた。
どんなヤバい奴かと思ってたが....
良い奴そうじゃねーか、あの村瀬、ビビらせやがって。
玄関を上がり、アシスタントの猛、嘉之ことヨッシー、洋太にも寛人はしっかり挨拶をし、3人ともあっという間に打ち解けた様子だ。
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