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第3話

とりあえず、仕事はひと休憩にし、俺、猛、ヨッシー、洋太で寛人の歓迎会。 「居酒屋でも行きたいとこだけど、悪いね、今、締め切り前なもんで」 先日の就職の為にアシスタントを辞めた大地の送迎会で余っていたおつまみや酒もあったが、気分転換になるんで、と猛とヨッシーがコンビニで酒やつまみ等、買ってきて貰った。 「いえ、嬉しいです。今日からよろしくお願いします」 「いやー、やりずらそうな人で良かったっす。ね、先生」 洋太に笑顔でふられ、 「だな。どこかでアシスタントやってたの?寛人」 「いえ、アシスタントの経験ありません」 えっ、と一瞬、ビールの缶を片手に全員が固まった。 「その...実は17で1度、デビューしていて....」 「「えっ!?」」 一斉に声が上がった。 もしや...担当の村瀬が気をつけてください、はこの事か....? と脳裏を掠めた。 「17でデビュー?だったら、今もどこかで漫画描いてるの?」 猛が尋ねると、寛人は切なげな表情で首を横に振る。 「それが。デビュー作以降、鳴かず飛ばずで。ずっと編集さんから駄目だし食らってばかりで」 「あー、なるほど。でも、凄いね、17でデビューとか」 「そんな事ないです。スランプ抜け出したくって、ずっと大ファンだった西野先生のアシスタントしてみたいって、編集さんにお願いして....」 途端、色白な寛人の顔が微かに赤く染まった。 「俺のファンだったの?」 「はい。デビュー作からずっと読んでます。あっ、でも今作でファンになって、それから過去作も読み始めて...凄く好きです。西野先生の作品...」 寛人はまだ19なので、1人だけ、コーラのはずが間違えて酒を飲んだのかと誤解しそうな程に真っ赤な顔で呟くように語っている。 俺のファンと聞いて、嬉しいのは確かだ。 が、まさか、俺の作品から盗む、とかないよな...と、一抹の不安にも駆られる。 今、本腰を入れて描いている作品はアニメ化する話しもあるからだ。 デビューしているなら、寛人も担当から聞いて知っていてもおかしくは無い。

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