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第1話 雪音の日常
神様、仏様ーーー・・・・・・。
願いを叶えてくれるならこの際、誰でもいい。
ーーー・・・・・・どうか、このまま。
アイツが一生オレだけを見ていますようにーーー・・・・・・。
「ねえ、雪音。僕達つき合わない?」
コトを終え、服に着替えながらシュウがそんなことを言い出した。
「つき合わねえよ。オレ、前に言ってるよな?誰ともつき合う気はないって。勘違いしてんじゃねえよ。お前はただの遊びだ。」
「そんなことわかってるし。言ってみただけだもん。」
シュウはぷー、と口を膨らませ渋々服に着替える。
「じゃあさ、また遊んでくれる?」
「気が向いたらな。」
それだけ言ってホテルの出口に向かう。パタパタとシュウが後ろを走って着いてくる。
これがオレ、月嶋雪音 の日常。
シュウと駅で別れてから、オレはもと来た道を戻る。ホテルに向かうわけじゃない。そっち方面に自宅があるからだ。
駅から歩いて10分ほどにある学生にしちゃかなり良い2DKの10階建てマンション。オレの実家がまあまあな金持ちで親の金で借りてるマンション。
エレベーターに乗り、10階のボタンを押す。
部屋の前に辿り着き、鍵を開ける。
入ると真っ暗なので明かりをつけ、リビングへ向かう。
「おい、起きろ。んなとこで寝て風邪引かれたら迷惑。」
ソファとテーブルの間に座り、課題をやってたのかパソコンを開いたままテーブルに突っ伏して寝ているヤツの腰辺りを軽く蹴る。
「ん、雪音?帰ってたんだ。おかえり。」
寝ぼけながらゆったりとしゃべるコイツはオレと同じ大学の同級生、一宮那月 。オレは今、コイツと一緒に暮らしている。
「寝るなら部屋行けよ。」
ソファに座り、冷蔵庫から持ってきた酒を飲む。あ、もちろんオレは20歳だ。
「ーーー・・・・・・ん。」
ソファに寝転びスマホを操作しようとしたら、目の前が突然暗くなる。
「何?」
「ーーー・・・・・・また違う匂い。」
那月がオレに跨り、首筋あたりを顔を埋める。
「だから?」
「ーーー・・・・・・雪音、何でオレのことは、」
「前に言ってるだろうが。オレはお前を抱くつもりはねえって。」
「ーーー・・・・・・っ、」
何も言わなくなった那月がオレの上から降りて部屋へと向かう。
これもまたオレの日常。
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