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第4話

 オメガであることが発覚して1年が経ち、ぼくは無事希望していた高校に進学することが出来た。  中学時代、進路のことで何度か両親と揉めたが、ぼくの定期検診の担当医である藤松先生が「オメガだからと言って普通の生活ができなくなるわけではない」と援護射撃をしてくれたおかげだ。  生活も特にこれといった変化はない。  強いていうのならば、月に一度の定期検診の予定が追加されたくらいだ。  発情期を迎えていないのも大きな理由だろう。  そんなこともあり、ぼくの高校生活は順風満帆だと思っていた。 「蓮、ごめんね。今日の昼休み、他の人と約束しちゃったんだ」 「そっか。分かった」 「ごめんね、帰りは一緒に帰れると思うから」 「大丈夫だよ。じゃあ、また放課後にね」  4時間目終わり、拓人が迎えに来てくれたものだと思って弁当を片手に彼に駆け寄ったぼくは落胆した。  仕方がない、拓人は完璧なアルファだし皆仲良くしたいんだろうなと分かってはいるが、残念な気持ちはおさまらない。  高校に入ってからも、拓人と過ごすことが多かったせいで新しい友人がいないのでおひとり様か、と弁当を持ってとぼとぼと自分の席に戻ると、後ろの席の関口に声をかけられた。 「今日は永井と行かないの?」 「なんか、他の人と約束しちゃったって」 「へー、珍しい。じゃあ、一緒にたべようぜ」  関口は、席が近いこともあって班を作る系の授業で何度か話したことがあった。  彼は、拓人以外との関わりが小学校以来ほとんどないぼくに対しても気さくに話しかけてくれて、いい奴なんだろうなという印象を抱いている。 「え? いいの?」 「勿論。むしろよくない理由なんてあるのか? たまにはクラスメイトとの交流も大事でしょ」  そう言いながら関口はぼくの椅子を机から引っ張り出し、机は後ろの関口との机とくっつけた。 「ありがとう。でも、関口も他の友達と約束とかあったんじゃないの?」 「うん? 平気平気、あいつら部活のミーティングや委員会当番のせいで今日はいないんだよ。ま、あいつらがいても篠原がおひとり様してたら普通にそうけどな」 「もう部活のミーティングとかあるんだ……。ぼくは、まだ決めてすらないや」 「まだ、入部届提出の締め切りまで結構あるもんな。田島……今日昼ミーティングに行ってるやつは部活推薦だから入学式の前から部活に参加してたんだって」 「そういうのありなんだ」 「一応、入学式前から参加するって場合はルールがあるみたいだよ。詳しいことは聞いてもイマイチ分からんかったけど」 「なんか、入学式前だと高校生って実感無いからすごく緊張しそう……」 「知ってる先輩とか仲のいい先輩がいたらマシだけど、誰も知らないってなったらアウェイ感が半端ないだろうな。オレ、そういうの結構苦手だから想像しただけでゾワッとする」 「関口はコミュニケーション能力高そうだから、そう言いながらもさっさと馴染みそう」 「え、篠原の俺に対する評価って結構高い系?」 「評価って言うとなんだか上から目線だから違う気がするけど……でも、関口はクラスに馴染めてないぼくに声かけてくれるような良い奴だなとは思ってるよ」  ぼくがそう言うと関口は照れくさそうに頬を掻いた。  案外会話は弾んで、弁当を完食する前に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。慌てて残りの弁当をかき込んでいると、廊下の方がにわかに騒がしくなった。

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