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第18話・ターゲットを尾行せよ!⑥

「なんだ。たいしたことない奴らだな。折角久しぶりに暴れられるかと思ったのに」 なんて残念そうな声を上げる俺の元に時雨と友成が駆け寄って来る。 「陽斗!」 「陽斗、腕は大丈夫なのか!?」 「ああ。少し切れただけだから何ともな…ぶふっ!!」 心配そうに声を掛けてくれる二人を振り返った俺は思わず吹き出してしまう。 何故なら二人ともまだ擬態したままだったから。 「な、何だよ急に?」 「いや、はははっ、お前達まだその格好だったから、よく見たら変な格好だなってな。あははっ!」 「うおいっ!誰の指示でやってたと思ってるんだ!?」 「そ、そうなんだけどさ!ふ、ははっ!」 「全くお前という奴はーっ!」 「やれやれ」 まだ笑い続ける俺の姿に時雨達は呆れたように言葉を放ちながらお面と手袋を取る。 「というか、本当に腕は大丈夫なのか?」 「ああ、大丈夫大丈夫。こんなの唾でもつけとけばなお…いでぇっ!!」 「全然大丈夫じゃないだろ、全く」 友成の言葉に笑顔で答えて傷口部分を軽く叩いたら思いの外激痛を感じて声を上げる俺を時雨が呆れたように見やる。 「学園に戻ったらちゃんと手当てしてもらった方が良いな」 「そ、そうするか。あ、律樹には内緒だからな!」 「ああ、うん。そうだよな。お前がまた無茶したと知ったらお説教は免れないなぁ?」 「べ、へつにお説教が怖い訳じゃない!ただ余計な心配かけたくないだけだ」 「はいはい」 「分かった、分かった」 慌てて弁解する俺の言葉に全く分かっていない様子で頷く時雨達をじとりで見てから、視線を未だに座り込んでいる高間の方へと向けると、俺もゆっくりとしゃがみこんで問いかける。 「おい。大丈夫か?怪我は?」 「………………」 けれど、高間は俯いたまま無言を保って何も言葉を発しようとはしない。 まあ無理もないだろう。 知り合いでもない奴によけいな助太刀淹れられた気分だろうし。 先程まだの高間の様子を見ると、他人の関わり合いになるのを嫌うタイプそうにも見える。 「まあ、別に誰と友達になろうがお前の自由だけど、あんまり危ない真似はしない方が良いと思うぞ」 斎藤先輩だってきっと悲しむだろうしな。 そんな思いを込めてもう一度声を掛けると。 「……っす」 と、高間は小さく声を零したかと思えば、ガバッと顔を上げて俺の方へと身を乗り出してきた。 「凄いっす!!あの最強と噂の赤城さんに出会って助けられるなんて!!俺、超感激したっす!!」 なんて、きらきらとした純粋な尊敬の眼差しでまっすぐに見つめながら告げてこられた言葉に、俺達は唖然としてします。 「は、はいいっ!?」 「俺も中学の時から赤城さんの噂は耳にしてて!ずっと憧れてたんっす!!だからこうして直接お話する事が出来て光栄すぎて興奮してるっす!」 「え、ええと…?」 予想外の展開に、流石の俺も困惑して言葉を失ってしまう。 本来なら、関係ない奴が俺なんかにかまうなよ!とか拒絶されると思っていたんだが、現実はそうではなかったらしい。 なら、先程俯いていたのは悔しさを堪えていたわけではなく、嬉しさに打ち震えていたからとかそんな感じなのだろうか。 いかにも尊敬しています!といった雰囲気と満面の笑顔で俺を見つめてくる高間を見ていると 、なんだか家で飼っているゴールデンレトリバー達の姿を彷彿とさせてしまい、高間の頭と尻に犬の耳と尻尾が生えているように見えて来た。 いや、勿論実際には生えてはいないんだけれども。 何というか、この展開は全く想像していなかった。 それは時雨や友成も思時だったらしく、ポカンとした様子で呆気にとられたように俺達を見ている。 「あの、赤城さんの事の兄貴って呼んでいいっすか!?」 いや、何でだよ。同じ学年だろ。 嬉々として告げられた言葉に内心ツッコミを入れながら俺は苦笑するしかない。 まさか孤独な不良系かと思っていた高間がこんなわんこ気質だったとは思いも寄らなかった。

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