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第25話・浩太の思い➁
「でも、もしまた親父が…あの男が出所して取り返しに来たらと思うと…。これ以上斎藤先輩達に迷惑はかけられないですし、今度こそ俺が強くなって二人を護らないとって。だから、どこか強いグループに入って力を手に入れたかったんっす…斎藤先輩は心配して反対してたけど、どうしても俺には強くなることが、力が必要だったから」
「そうだったのか。そんな事情があったんだな」
話を聞き終えた後は、皆重い空気に包まれてしまう。
思った以上に浩太は壮絶な家庭環境の中で育っていたから。
話を聞いていた誰もが浩太の親に対して怒りを感じていただろうし、特に俺は俺にも弟と妹が実はいるから自分の事の用に怒りを感じて浩太の親父を再起不能なまでにぼこぼこにしてやり炊くまでなっていた
「それならなんであいつらと縁を切る事にしたんだ?」
「入った当初は良かったんっす。純粋に他校の不良との縄張り争いの喧嘩に明け暮れるだけで、喧嘩していく中で着実に力も付けられましたし、関係ない生徒も巻き込まなかったですから。……けど、俺は知らなかっただけだったんっす。あいつらがその裏でもっとあくどい事とか、薬なんかやっている事に。その事に気が付いてからはあいつらのやり方についていけなくなってたんっすけど、丁度その時に俺の身を心配した柚希、斎藤先輩が俺は近づくなって言ってたのにあいつらに接触して獅童ってリーダーに俺を開放して欲しいって頼みに行ったらしくて」
げっ、斎藤先輩そんな危ないことしてたのかよ!
穏やかで優しくていかにも争いごとなんて嫌いですって感じのタイプなのに。
まあ、それだけ浩太のことを心配してたって事なんだろうけれどな。
「それでその時に獅童に目をつけられたらしくって。これは不味いと思って、斎藤先輩とは距離を取る事にしたんっす。近づくなって言ったのにお前のせいで俺の立場が悪くなったって、約束を破る様な最低な奴とはもう金輪際関わり合いになりたくないって。酷い事言って、多分泣かせてしまったんっすけど…それでも獅童の魔の手が伸びる前に距離を置く為にはそうするしかなかったんっす」
悲しげな表情で辛そうにそう話す浩太の話を聞いて、俺はもしかしてとある事に気が付いて隣に座っている律樹へと視線を向けると、律樹も俺の方へと視線を向けて軽く頷いた。
それで俺は確信する。
斎藤先輩の言っていた、大事な幼馴染を裏切ってしまったというのはきっとこの事なんだろうと。
そして、先輩の話を聞いていた時に感じた通り、浩太は本当に先輩のことを嫌っているわけではなく、先輩の身を護るためにわざと距離を取っているのだと言う事も。
「なるほどな。けどそれでお前はどうやって抜けられたんだ?」
「ああ、それは簡単っす。抜ける為の儀式を受けて抜けたんで」
「抜ける為に儀式って…?」
「まあ、獅童さんが選んだ喧嘩の強いグループの奴ら20人と俺1人でぶっ続けでタイマンはって全部KO勝ちしたら出て言っていいってやつっすよ」
「なるほど」
さっき見た浩太のあの強さなら、それもそんなに苦労する事もなかったんだろうなとは思えた。
「じゃあ、今は完全に切れてるって事だな」
「そうだと思いたいんっすけど。あいつらの事っすからいつ約束を平気で破るかも分からないし、用心のために斎藤先輩との距離も取ったまま様子を見てたんっすけど…」
「今日の呼び出しがあったって訳か」
俺がそう呟いたのを耳にして、浩太は不思議そうに俺の事を見つめてくる。
「そうっすけど。あれ?陽斗の兄貴、どうした俺があいつらに呼び出されたって知ってるんっすか?さっき助けてくれた時は確か通りかかったって」
「あ゛」
扱くまっとうに疑問に俺は思わず間の抜けた声を上げてしまい、その場にいた律樹達もやれやれと言った様子で溜息をつき頭を振ったのだった。
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