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第24話・浩太の思い①
俺と律樹が保健室から生徒会室へと戻ると、時雨達が高間と共にソファで茶を飲みながら談笑していた。
「おっ。お帰り、陽斗。用事は終わったか?」
「時雨。お前は後でヘッドロック一万回な」
「何で!?」
つっこんでくる時雨を無視して俺も時雨達の反対側のソファに浩太の前になる位置へと腰を下ろし、その隣に律樹も座る。
それと同時に友成が淹れた茶を出してくれた。
「今日のは俺がオリジナルでブレンドした茶葉だかどうだろう?」
「お。美味いな。ほんのり甘味があって爽やかで飲みやすい」
「ああ。確かに、これは飲みやすいな。冷やして飲むには今からの季節に丁度いいかも知れない」
「そうか。よかった」
俺と律樹の言葉に友成は嬉しそうに微笑み、自分も湯飲みへと口づける。
「佐野原さんの淹れたお茶って本当に美味いっすね」
「まあ、友成は茶を入れる腕に関しては天才だからな。というか、何でさん付けなんだよ、だから。俺達全員同じ学年だろ?」
「いやだって、陽斗の兄貴のご友人なんでつい」
「陽斗の兄貴」
「おい、静かにうけるな律。あと浩太も兄貴はやめろって言ってるだろ」
「いやっす」
「即答かよ」
笑顔で断る浩太の姿に俺はやれやれと溜息をつく。
その隣で律樹は込み上げてくる笑いを堪えながら、茶を飲んでいた。
澄ました顔をしているけれど、湯飲みを持っている手が小刻みに震えているのでもろばれである。
「まあ、いいや。それで、お前はなんだってあんな連中と付き合ってたんだ?今は切れたみたいだけれど。強くなりたいってのは…?」
本題に入った俺の言葉に、浩太は少し湯飲みを持ったまま沈黙を保っていたものの、やがて湯飲みをテーブルの上に置いてゆっくりと離しだす。
「…実は、俺の家、家庭環境があまりよくなくて。親父は酒乱で酒を飲んだらすぐ俺達に手を出すやつで、酒を飲まなくても気に入らない事があったら殴ってきて。母親は母親で親父の暴力に耐えられなかったのと。元々育児放棄気味で俺達に愛情のない人間だったからさっさと新しい男作って出て行ってしまって…。それで、余計に俺達に対する親父の暴力は酷くなって…」
「酒乱だけじゃなくてDVも気質もあるって事か。最低だな」
「俺達って言うのは…もしかして?」
「はい。俺には弟と妹がいるんですけれど、弟は中一で妹はまだ小学四年生で。だから俺が二人を護ってやらないとって何とか親父の暴力を1人で受け続けて庇ってたんっすけど、とうとう力がでなくなって…その時に、弟や妹まで被害が及んだのを見て俺が弱かったから守れなかったんだって…思い知ったっす」
そういうと、浩太は膝の上で悔しそうに拳を握り締める。
「倒れた俺を見て弟が代わりに妹を護ろうとしてくれたけれど、弟は元々体が弱くて、優しい子だから容赦なく殴られて蹴られて気絶してしまって…ついには妹にまで…俺、何度もやめてくれって、殺すなら俺を殺していいから妹には手を出すなって叫んだのに、それを見て親父はあの男は愉快そうに笑って。お兄ちゃん痛い、痛いよ、助けて!って泣きわめく妹を殴りつけて…俺は、俺は何もできなくて…!」
「おい。その糞野郎は今どこにいる」
「落ち着け陽斗。お前がいってどうなる。先に手を出したら捕まるのはお前だぞ」
余りにも胸糞悪い話を聞かされて強い怒りを感じ浩太の親父を今すぐにでも殴り倒しに行こうとした俺を、律樹が冷静に止める。
「…それで、弟と妹達はどうなったんだ?」
「その時丁度、柚希…幼馴染に2年の斎藤先輩がいるんっすけど、彼が俺達の事両親に相談してくれていたらしくて、彼の父親がたまたま様子見にうちに来てくれて、間一髪のところを警察に通報して止めてくれたんで、親父はそのまま虐待の現行犯で捕まって警察に連れていかれて…俺達は児童施設に行くことになってたんですけれど、それを斎藤先輩の両親が家で引き取るからと言ってくれたんで、今は二人共斎藤先輩の家に避難していて無事っす。皆二人にとてもよくしてくれてて。でも…」
浩太はそこまで言うと、俯いて言葉を途切れさせる。
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