7 / 154
出会い、そして始まる...
卒業式。
涼太とも豊とも、さよならだ。
「じゃあ、またね」
と涼太が手を振った。
豊も、
「またな」
と微笑んだ。
ようやく、呪縛から逃れられるかな。
涼太を責めることはしなかった。
あんなに仲良かったから、怖かったのかもしれない。
自然と離れていくのが一番、と俺は勝手に解釈した。
それが災いをもたらした。
晴れ晴れとした気持ちの高校の入学式。
離れ離れになるよう企てたつもりなのに、涼太と豊の姿があったからだ。
目を疑った。
「....豊の高校、受験したんじゃなかったの、涼太...。それに、豊も...せっかく頭いいのに、なんで....」
「えーっ、だって、樹がいなきゃつまんないじゃん」
「俺も親からうるさく言われたけどさ、こっちの方が部活も充実してるから、とか、テキトー言ってさ」
涼太も豊も笑顔だが、俺は頭ん中、真っ白だ。
「....意味がわからない」
「え?」
涼太が丸い目をし、呟いた俺を見た。
「....ごめん!」
俺は2人を置き去りにし、立ち去った、俯いたままだったせいで壁に額がぶつかった。
「....いってーな、チビ」
はっ、と顔を上げると、忌々しそうに俺を見下ろす、同じ制服ながら金髪の男子だ。
「す、すみません...」
「ちゃんと前、見て歩けよ、チビ。....じゃねーか、前を見て走れ?」
突然、難しそうな顔になり、小首を傾げる姿に小さく吹き出してしまった。
途端、
「笑うんじゃねーよ、チビ」
ようやく、162cmになったものの、チビには違いない。
「すみません」
慌てて頭を下げると、今度は笑われた。
「なんで怒んねーの?チビって言われて」
「え....だって、その...チビだから」
ふーん、と彼は俺の顔をまじまじと見つめた。
「謝ってばっかじゃ疲れない?たまには怒りなよ。ケースバイケースだけどさ」
きょとんとしたままの俺に続けた。
「俺、古閑俊也、1年。お前は?」
「....葉山樹、1年です」
プフ、と俊也が笑う。
「タメ口で良くね?同い年だっつーのに」
「え、あ、確かに、ですね」
これが俊也との出会いだった。
ともだちにシェアしよう!