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第7話

卒業式。 涼太とも豊とも、さよならだ。 「じゃあ、またね」 と涼太が手を振った。 豊も、 「またな」 と微笑んだ。 ようやく、呪縛から逃れられるかな。 涼太を責めることはしなかった。 あんなに仲良かったから、怖かったのかもしれない。 自然と離れていくのが一番、と俺は勝手に解釈した。 それが災いをもたらした。 晴れ晴れとした気持ちの高校の入学式。 離れ離れになるよう企てたつもりなのに、涼太と豊の姿があったからだ。 目を疑った。 「....豊の高校、受験したんじゃなかったの、涼太...。それに、豊も...せっかく頭いいのに、なんで....」 「えーっ、だって、樹がいなきゃつまんないじゃん」 「俺も親からうるさく言われたけどさ、こっちの方が部活も充実してるから、とか、テキトー言ってさ」 涼太も豊も笑顔だが、俺は頭ん中、真っ白だ。 「....意味がわからない」 「え?」 涼太が丸い目をし、呟いた俺を見た。 「....ごめん!」 俺は2人を置き去りにし、立ち去った、俯いたままだったせいで壁に額がぶつかった。 「....いってーな、チビ」 はっ、と顔を上げると、忌々しそうに俺を見下ろす、同じ制服ながら金髪の男子だ。 「す、すみません...」 「ちゃんと前、見て歩けよ、チビ。....じゃねーか、前を見て走れ?」 突然、難しそうな顔になり、小首を傾げる姿に小さく吹き出してしまった。 途端、 「笑うんじゃねーよ、チビ」 ようやく、162cmになったものの、チビには違いない。 「すみません」 慌てて頭を下げると、今度は笑われた。 「なんで怒んねーの?チビって言われて」 「え....だって、その...チビだから」 ふーん、と彼は俺の顔をまじまじと見つめた。 「謝ってばっかじゃ疲れない?たまには怒りなよ。ケースバイケースだけどさ」 きょとんとしたままの俺に続けた。 「俺、古閑俊也、1年。お前は?」 「....葉山樹、1年です」 プフ、と俊也が笑う。 「タメ口で良くね?同い年だっつーのに」 「え、あ、確かに、ですね」 これが俊也との出会いだった。

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