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第9話

涼太の部屋を後にした俺はふらふらと中庭を歩き、木々に囲まれたベンチにペタン、と座り込んだ。 昼間は春の陽気で暑いくらいだが、風が心地いい。 見上げると幾つかの星が見えた。月は見えない。 「夕飯は食べねーの?おチビちゃん」 振り返ると、足を崩して座り、ハンバーガーを貪る金髪の男子、俊也の姿があった。 草っ原に紙袋を置き、その上にハンバーガーの包みとポテトが乗っている。 「寮の夕飯、食いっぱぐれんじゃねーの?」 「別にいい、お腹すいてはないし」 「だから、チビなんじゃん、ほら」 まだ手付かずのバーガーを差し出された。 「いいよ、大丈夫。それに、俊也が足りなくなる」 「いいから、ほら」 無理やり、手にバーガーを握らされた。 「ポテトも自由に食っていいから」 俺の座るベンチの隣に俊也が移動してきた。 「この場所いいよな、特に夜はあんま人も来ないしさ」 「...よく来るの?」 「うん。戯れんの嫌いなんだよね、俺」 そう言うと、大口でバーガーにかぶりつく。 「お前も冷めないうちに食えよ。って、もう、冷めてっか」 モガモガとバーガーを食べながら喋る俊也。 確かにもう冷めきってる。 「....いただきます」 せっかくだし、本当は俊也の食べているハンバーガーに釣られたようにお腹はすいてた俺はバーガーに齧り付いた。 「飲み物は半分こな」 互いの真ん中にLサイズのカップのジュースが置かれた。 「なんか悩み?」 「....話したら長くなるから」 「ふーん...ま、話したくなったら話せばいいよ、テキトーに」 俊也のマイペースな口ぶりがおかしくて、また笑いそうになった。 「まーた笑う。そんなおかしい?俺」 「あ、ごめん。変な意味じゃなくって。面白いなって」 「まーた、謝る」 ガブ、と俊也がバーガーに齧り付く。 思わず、また、ごめん、と言ってしまった。 それから、次第に学校でも俊也と一緒にいる機会が増えていった。

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