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涼太side
涼太side
豊の部屋の狭いベッドで行為を終え、がむしゃらに脚をばたつかせてる。
「あー、つまんない!つまんない!」
「何回目よ、それ」
豊はため息混じりに俺から離れた位置に座ってる。
「言わなきゃ良かったかなあ、いや、言っても変わんないか」
「なんの話し?」
「さりげなく樹に告った」
「はあ!?」
途端、豊は前のめりになった。
「樹、好きな奴いるんじゃねーの?」
しまった、と俺は慌てて口を噤んだが、既に遅い...。
「....樹の好きな奴って誰よ」
「....知らない」
「知らない?俺には好きな奴いるから諦めろって言ったじゃねーか」
俺はひょい、とベッドから降り、脱ぎ散らかしていた服を集めた。
「騙される方が悪いんじゃん?」
「は?」
フンッと鼻を鳴らし、一度、脱ぎ捨てた私服に身を包む。
「騙したわけ?俺を」
「まあ、そうなるよね。被っちゃってたからさ、好きな奴。俺にとってはお前、ライバルな訳だし?」
凍てつくような怒りを感じる無音を割ったのは豊が俺を殴る乾いた音。
「じゃ、お前、なんでお前、俺と寝てたの」
「....樹から引き離したいから?」
またパン!と頬を叩かれた。
「俺と樹を引き離したい?もしかして、樹は....」
「樹が好きなのは豊でした。でも残念でしたー。去年、3人で勉強会したときさ、樹、寝つけて無かったらしくって、俺たちのセックス見てたんだって」
豊が硬直した。
「やってる最中だったし、気を使って起きるに起きれなかったのかもね、樹」
「帰れ」
「なに?」
「帰れっつってんだよ!」
「俺だけ悪者とかやめてよね、同罪なんだから」
「いいから帰れ、出ていけ、顔も見たくない」
豊に部屋を追い出された。
ドア越しに豊は頭を抱えてるだろうか。
....本当は俺だって辛い。
樹を抱きたい。Ωだけど。
樹に愛されたい。
悲しいかな、αの豊にはその資格がある。
もし、俺がαだったなら....。
愛してくれたかな。
豊のように、俺に樹は恋をしてくれたかな。
考えても無意味なのに。
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