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第11話
昼休み、俺は俊也と購買部に来ていた。
人だかりな為、なかなか選べないまま、つま先立ちでパンの品定め。
「樹」
振り返ると当たり前だけど俺と同じ、グレーの制服に小豆色のネクタイの豊が突っ立っていた。
「樹、話しがあるんだ、ちょっといい?」
「....」
豊を見つめたまま、言葉を見失っていると、俊也に手首を握られた。
「チビだと購買部で買い物も大変そうだからさ、テキトーにお前のぶんも買っといた」
「あ、ありがと、俊也」
不意に俊也の鋭い瞳が立ち尽くす豊を見据えた。
「誰?」
「え、あ、その...幼馴染み」
「ふーん。ま、いいけど、早く買わないとあんたも昼飯、食いっぱぐれるよ?行くぞ、樹」
手首を引かれ、振り向きざまに豊を見た。
ただただ、俺たちを見つめて未だに立ち尽くす豊の姿に胸が痛んだ。
「....俊也」
「話したくねんだろ?無理に話す必要はないんじゃね?いつか、話せるときにさ、話せばいいよ」
「でも...明日が来なかったら怖い」
「明日が来ない?」
突然、俊也が手首を握ったまま、俺を見下ろした。
「うん...突然の事故とか病気とか....色々。話しておけば良かった、て後悔しそう。だから、怖い....」
「ふーん...まあ、気持ちはわかるけどさ、さっきの樹の顔はさ、なに話したらいいかわかんない、てツラしてたから。話しても意味がない気したけど」
....多分、俊也の言う通りだ。
「答え出なくて、また、ごめん、て謝るんだろ?樹の場合」
ぱちぱち、しばらく瞬きを繰り返した俺は思わず笑った。
「....すぐ、謝っちゃうみたいだもんね、俺」
「無意識に、なんだろうな。てか、早く屋上、移動。時間なくなる」
そうして、2人で晴天の下、パンを頬張った。
俊也が買ってきてくれてた、メロンパンとクリームパンとサンドイッチ、紙パックの牛乳。
俊也は焼きそばパンとソーセージの挟まったパンにコーヒー牛乳。
「寮の夕飯さ、回鍋肉らしいよ」
「回鍋肉かあ、美味しそう」
「一緒、食い行くべ」
「うん」
なんだろうな。
俊也といると気が楽だし、なんだか楽しい。
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