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第30話

笑顔で俺を見つめたはずの俊也の瞳が涼太に降り、何故か俊也は強ばった表情になった。 「....なんでお前がいんの」 「えっ、樹の友達なの?俊也くん」 呆然と二人のやり取りを見つめた。 いつの間に、二人、知り合ってたんだろう....。 聞くのが怖い...。 「樹の幼馴染みなの、俺。ね?樹」 「え?う、うん....」 まだ微かに赤い目で涼太は俺に微笑んでみせた。 一方、俊也を見上げると、忌々しそうな不思議な顔で、涼太を見下ろしている。 「飯、行くぞ、樹」 俊也は涼太には声を掛けず、俺の元に歩み寄り、俺の手首を掴み、立ち上がらせた。 「あ、待ってよ、樹と夕飯食べる約束してたのに」 涼太を無視し、俊也は俺の手首を握り、歩き出す。 「....あいつ、ほんとにお前の幼馴染みなの?」 「え?う、うん」 はあ、と俊也が重いため息をついた。 「いつから?」 「小学校から....」 「....意外。長いんだな」 「うん....」 涼太が俺たちに追いついた。 「もう!置いていかないでよ、樹も俊也くんも」 初めて、涼太も交えて、食堂で三人で食事を摂った。 親子丼、肉じゃがの小鉢、胡瓜と蛸の和え物、ほうれん草と油揚げの味噌汁。 珍しく、俊也も無言で、俺も特に話しはしなかった。 「んま!美味しいね、樹」 「う、うん」 「俊也くんも親子丼、好き?」 愛想良く、涼太が声を掛けたが、俊也は答え無かった。 ふと、耳元を見たら、ワイヤレスのヘッドフォンを付けている。 「俊也くん、無愛想!ねっ、樹」 「う、うん...」 相槌を返すだけ。 こんなに重苦しい空気の中、初めて、食堂で食べた。 いつもは俊也が話しかけてくれるのに...。 ずず、とお椀を持ち上げ、お味噌汁を啜っていると、 「ごめんな、樹。俺、あいつ、なんか苦手だわ」 正面に座る涼太に気づかれないよう、こそっ、と俊也は俺の耳元に唇を寄せ、俊也の小さな本音を聞いた。

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