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第29話

どうしよう...。 動けない....。 昔もなんかこんな事があったような....。 「最近、なんかいい事あった?」 膝を抱え、満面の笑みで涼太が聞いてくる。 「え....ど、どうかな....」 「ふーん」 そうして、優雅だけどマイペースに、涼太はクッキーを食べたり、紅茶を飲んだり。 「....豊に謝られた」 「豊に?」 「....うん。傷つけてごめん、みたいな....」 「そっか、それで?」 突然、涼太が何処か悲愴な切ない表情で俺を見つめた。 「それで、て...別に...謝られただけ」 「....そっか。酷いよね、豊」 えっ、と再び、涼太に釘付けになった。 泣きそうな顔な涼太が口を開いた。 「豊には口止めされてたんだけどね、樹の代わりに抱かせて、て無理やり犯されたんだ....豊、俺が樹を好きなの知ってる癖に」 涼太は鼻を啜り、怒った表情になった。 ....豊の話しと違う。 でも、涼太は泣いてるし...豊が説明を省いたのかな。 「嫌だった、ずっと。樹にも悪いし止めよう、て言ったのに...言うこと聞かないなら、ばら撒く、てハメ撮りされてたし....」 涼太は語尾になるにつれ、涙声になり、頬を伝う涙を拭い始めた。 「....そうだったんだ」 「俺にも謝って欲しい、豊....っ!」 慌てて、涼太の傍に移動し、ティッシュの箱を渡した。 「....ありがと、樹。樹だけが俺の味方だよ....ごめんね、樹」 俺は自然と首を横に振ってた。 勉強会のあの晩、涼太、ノリノリなように見えたけど....演技だったのかな。 「あ、もうすぐ夕飯....」 時計を見ると、そろそろ食堂に移動しなきゃいけない。 「....一緒、食べよ?樹」 ぐすん、と鼻を鳴らす涼太を断る術が見当たら無かった。 そんなとき。 ドアかノックされ、 「入るぞ、樹」 と、俊也の声がした。

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