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第32話

それでなくてもイラついてるってのに、苛立ちを含んだような豊の瞳を向けられ、また苛立ちが募る。 「なんで睨まれなきゃなんないの、俺。豊になんかした?気持ち良くしてあげたのに、あんまりじゃない?」 「...いい加減にしろよ」 「なにが」 ベッドから起き上がり、胡座をかき、豊と向き合った。 ムカつくけど、こいつの方が背丈あるから見上げなきゃいけない。腹立つ。 「俺を騙して寝て、樹に見つかって、充分、樹は傷ついたろ。もちろん、お前だけのせいじゃない、お前の言う通り、まんまとお前の下手くそな嘘に騙された俺も同罪だけど」 「なにが言いたいわけ?長ったらしい話し、嫌いなんだけど」 「樹を見てたらわかるだろ。俊也って奴にようやく心開いてる。俺たちでどんだけ、純粋な樹が傷ついたか...お前は想像すら出来ないだろうな」 豊を見上げ、瞬きを繰り返す。 そして、長いため息が出た。 「だから?俺にどうしろっていうの?」 「もう充分だろ?樹を傷つけるのは。俊也に近づいて、そして、どうするつもりだよ、言えよ」 あー、なに、勝手に八つ当たり? めんどくさい。 俺は近くにあったクッションを手繰り寄せて胡座をかいたまま抱いた。 「あいつさー、お前ほど、単純じゃなくってさ。どう仕掛けようか悩んでるんだよね」 「....は?」 「俺は悪くないもん。樹が悪いんだよ、忘れちゃってるみたいだから」 ふん、とクッションを放り投げ、勢い良くベッドを降りた。 「樹が忘れてる?なにを」 「豊には関係ない話しー、てか、ウザいんだけど、説教みたいな、やめてよね」 さっき放り投げたクッションが飛んできた。 「あっぶな!ぶつける気?」 足元に落ちたクッションを蹴り上げた。 「見損なった。変わったな、お前」 「え?前からこうだけど?気づかなかった?だから騙されるんだよ、まんまとさ。樹と引き裂いてごめんねー?ま、すぐにいい相手、見つけてよ。どうでもいいけど」 豊は一旦、拳を振り上げたが、すぐに下げた。 「殴る価値もねー」

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