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俊也side

俊也side 俺の借りてきた小説を食い入るように読む、樹の姿を眺めた。 「あんま、夢中になりすぎんなよ?」 どうも、樹は小説にのめり込み、最近、寝不足らしい。 「んー、あと、ちょっと....」 そして、また、カサ、と乾いた音を立て、またページを捲り、あどけない瞳が真剣に懸命にまた忙しなく文字を辿る。 「樹、キッチン、借りるな」 「ん....」 温かい紅茶を煎れ、 「...これくらいかな?」 蜂蜜と牛乳を入れ、ミルクティーの完成。 「ほら、樹。ちょっとひと息入れなよ」 不意に樹の視線がテーブルに置かれたカップに移動した。 「....紅茶、煎れてくれたの?」 「ん。美味いかは保証出来ないけどな」 「....ありがと」 そっとカップに口をつけ、ゆっくり飲んだ。 「あ、美味しい!」 「ホント?」 「うん!なんかまろやかな甘み....」 また、カップに口をつけ、飲んだ。 「蜂蜜、使ってみた。バニラエッセンスとかシナモンとかあったら、また違ったミルクティー出来そうだけど」 「いいね、それ!」 「近々、揃えて、また作ってやるよ」 肩を竦め、ありがと、と微笑む樹に笑顔になった。 不意に。 以前、涼太にやったあのテストをやってみようかな、と考えた。 なんとなく、答えは見えてるけど。 「質問タイム」 「うん」 「徒歩で移動中のあなたですが、うっかり寝坊してしまい、このままでは大事な待ち合わせに遅れてしまいそうです。さて、どうしますか?」 アーモンドアイの少し茶色い瞳が真っ直ぐに俺の目を見据える。 「....心理テスト?」 「うん」 「もう1回、俊也」 反芻して質問をすると、うーん、と口をへの字にし、真剣な顔付きになった。 「大事な待ち合わせかあ...駄目じゃん、俺....」 プフ、と思わず、吹き出した。 「で、どうする?」 「えーっ...謝る」 また俺は吹き出してしまった。 「なんで笑うの?」 「だろうな、て思ってたからさ」 樹も、あ、そっか、と笑った。

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