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第38話

俊也が先にブロック塀に飛び乗り、俺に手を差し伸べ、その手を握ると、引き上げられ、一緒にアスファルトに着地。 次第に慣れてきた。 が、いつまでも、俊也は手を握ったまま....。 「....俊也」 「ん?」 なんだか、いつもより優しい笑顔の俊也が俺を見る。 「....変に思われるよ?手を繋いでたら...人通りもあるし....」 俊也が屈託ない笑みを返した。 「樹が迷子にならないように繋いでるだけ。誰も変には思わないよ」 「でも....」 「気にしなきゃいい。二度と会うこともないだろう、他人でしかないんだから」 ....確かにそう、なんだけど。 ....ホントはなんだか、恥ずかしい、てだけ。 手に汗、かいていないかな? どうして、俺の手を握って歩くのかな。 俊也の清々しいような横顔を見上げながら、俊也の温かい手の温もりを感じながら... まるで、デートみたい。 そう思うと、顔が熱い。 「高一、て見たくれだし...あんま、いい店、入れなそうかな....」 苦虫を噛み潰したような顔で俊也が言った。 「....とりあえず、俺の知ってる店でいい?樹」 「うん、もちろん」 俊也と手を繋ぎ、着いた先は雑誌かなにかで見たことはある、て程度の三ツ星の有名なホテル。 「この最上階にさ、レストランがあるんだ。眺め、抜群だよ。樹の好みかわかんないけど...」 「....高いんじゃないの?」 再び、俊也は微笑み、 「樹はそういうの気にしなくていいの。樹の舌に合うといいんだけど....」 高級感溢れる、ホテル内に緊張しながら、エレベーターに乗った。 最上階のボタンを押した俊也を見つめる。 「....断られない?行き慣れてるの?俊也」 「んー...どうかな」 そうして、階数を知らせる機械的なアナウンスの後、俊也の後を追う。 レストランの入り口には正装し、かしこまった黒いスーツと首にはリボン、白いシャツのウェイターがいた。 俺と俊也を目に止めるなり、 「申し訳ありません、お客様...」 遮ったのは俊也だった。 「ドレスコード?時代遅れだよ、てこないだ、言ったばかりだけど?」 途端、は、とした顔になり、俊也に男性は頭を下げた。 「申し訳ありません、俊也様」 呆然としている俺に、俊也は、 「ほら、入ろう」 と背中を押した。

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