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第60話

とりあえず、俊也から部屋に来るなんて。 あー、良かった。 こいつ、豊みたく、チョロくなさそうだから、どうするか悩んでたんだよねー。 樹が好きなんだと思ってたけど、案外、俺狙いとか? 「趣味が合うと、楽しいかな、て思って」 「ああ、うん、確かに。カラオケとかー、あ、音楽聴いたりとか」 「料理は?」 「あー、料理はあんまり」 「あれ?こないだ、料理する、て言ってなかったっけ?レパートリー増やさなきゃとか...」 「え、い、言ったっけ、そんなこと」 「や、俺の気のせいかも。ダチの話しとこんがらがってたわ」 思わず、笑った。 ヤバい、忘れてた。 「つか、いつから、樹や豊と友達になったの?きっかけとか」 「あー...樹とは幼稚園の頃、知り合って。仲良くなったのは小1から。豊が2年の頃に引越してきて。それから、三人で遊ぶようになって」 「....なるほどな。豊が転校してきた、て事か」 「そう」 ....思い出したくないけど、仕方ないか。 「家族関係とかはどんな感じ?俺のとこはお前、一応は知ってんだろ?」 「それはまあ...テレビとか、ネットとかで」 「両親はなにやってる人?兄弟は?」 思わず、顔を伏せた。 言いたくないこと、聞いてくるな、こいつ...。 樹はおとなしいから、こんな事ないのに。 「....父親は貿易関係、母親は兼業主婦。兄弟はいない」 「へー。一人っ子かあ、幼いときさ、食事やおやつやら奪い合いも無くていいな。仲はいいの?」 「....え?」 「だから、両親と」 「....普通」 「ふーん」 なんで、そんな見るわけ、こいつ....。 「やっぱ、可愛いな。お前」 「え?あ、ありがとう....」 忘れてた、こいつ、俺に惚れてんだっけ。 αだから...?αの癖に。 こんな節操がなくて、誰でも抱けるようなα、マジ、変わってくんないかな。 俺がαになって。こいつがΩになればいいのに....。

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