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俊也side

俊也side. 涼太の部屋から戻り、自室のデスクのオフィスチェアに座りペン回しをしながら思考する。 デスクの上にはなんとなく思いついたキーワードを描き殴る。 ドアがノックされ、豊がやって来た。 先日、豊からはある程度の事情は聞いてはいたが、まだ確信には辿り着いてる訳じゃない。 豊は樹を傷つけた自分の醜さを俺に包み隠さず、教えてくれた。 「....クラシック?」 「柄にもねーと思っただろ」 「まあ、そのいでたちだとな」 立ち上がり、レコードを替えて針を落とす。 「すげーな。オーディオじゃなく、レコードか」 「ん。祖父の形見」 「....そっか。悪い」 「別に謝んなよ。コーヒー、淹れるわ」 年代物のレコーダーから退き、キッチンに向かい、二杯のコーヒーを淹れた。 「にしてもさ」 サンキュ、とカップを受け取り、豊が切り出した。 「なんで、お前。涼太に近づくんだ?俺から見ても、樹と相思相愛なのに。涼太、ほっといて付き合えばいいんじゃねーの?」 「俺も本当はそれが楽だけど。でもさ」 カップの中のコーヒーで出来た、小さな海を眺める。 「樹は望まないだろうから。涼太も、お前もさ、苦しめたくもない、傷つけたくもない。樹のいいところだよな。短所とばかり思ってたけど。あいつは多分、みんなが幸せでないと幸せを感じない」 「....なるほどな。俺には真似出来ねーや。今ですら、涼太どころか樹の顔を見れやしねー。逃げてばっか」 豊は眉を下げ、苦笑し、同じようにカップの中を見つめる。 「....お前はさ、馬鹿正直なだけだろ。根は悪くはねーよ」 「....初めてかも、そんな言われたの。でも、お前、マジ、すげーな」 豊が黒曜石のような瞳を持つ、形のいい目を上げ、再び苦笑する。 「別に。俺は樹の為に。そして、自分の為に必死なだけ。....樹が気づかせてくれたからさ」 「樹が?なにを」 「いや、なんでもない」 言葉を濁し、片手でカップを持ち上げて飲んだ。

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