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第62話

「で、豊。ちょっと、色々聞きたいんだけどさ」 「ああ」 「小2の頃に転校してきて、樹や涼太と仲良くなった、て涼太から聞いた。この話しはガチ?」 「ああ。樹の家と特に近くだったからさ、先に樹と知り合って。あいつ、世話焼きでさ、まだ詳しくない家の周辺とか教えてくれたり」 「先に樹と知り合ったのか」 「ああ。で、暫くして、樹から涼太を紹介された感じだったかな」 はあ、と俺は天井に向かって、ため息をついた。 「どした?」 「いや、涼太からそこら辺は聞いてはなかったからさ」 「わざわざ話すことでもないしな」 「まあ、それもあるけど...なんだろな。樹の好きな物を欲しがったり。俺が樹の為に、て話したはずのミルクティーも。あいつは自分の物のように振る舞うところがさ」 「悪い。俺、お前ほど頭良くないからイマイチわからない」 「や、別に頭良くなんかねーよ」 「嘘つけよ。お前、いつも成績上位じゃん。こんな偏差値低い、高校には勿体ないくらい」 「それはお前だろ」 思わず、俺も笑う。 廊下に張り出される成績上位、豊だって入ってるから。 「まあ...人の短所を探すのは簡単だけど、逆は難しいよな」 「確かに」 「涼太にもあるはずなんだろうけどなー」 プフ、と豊が吹き出した。 「知り合って間もないし、余計にだろ」 「だわ、マジ」 そうして、コーヒーを啜る。 「樹は聖母マリアか、てくらい、短所がわかんねーんだよな。なんつーのかな、体は小さいのに懐が太い....違うな、母性が強い」 思わず、俺も吹き出した。 「樹に母性か。まあ、わからなくはないけど。守りたくなる反面、あるな、確かに」 「涼太のいいとこねえ...愛想いい」 「まあ、それはあるか。後は....不必要な感情すら取り除けたら。ま、そんな簡単な事じゃねーけど」 「まあな、てか、この、流れてんの、バッハ?」 「なに?詳しいの、クラシック」 「いや、母親がよく聴いてたなあ、て」 「ああ、なるほどな。そういえば」 「ん?」 「涼太と涼太の両親ってどんな感じ?」

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