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第74話
もうすぐ夏休みになる。
涼太がやってきた。
「....なんか、変なんだよね、よくわかんないけど」
「変って?なにが?」
俺は俊也のお陰で素の自分で涼太と話せるようになった。
涼太も同じ。
「なーんか、豊と会うと胸が苦しい、みたいなさ、罪悪感かなあ」
ふと、左手首を見ると、豊がプレゼントしたブレスレットが揺れている。
「....そのブレスレット、いつも着けてるんだ?」
途端、涼太が真っ赤になり、焦り出した。
「ち、違うし!いいなあ、て思ってたやつだったし、それにお風呂のときは外すし!」
「そりゃ、お風呂のときは外さないとだよね。それ、皮みたいな感じだし、ふやけちゃう」
ニヤッとして言うと、涼太はリモコンを手に取り、うるさいなー、もう!とテレビを付けた。
「気になってるとかじゃないの?豊のこと」
「....でも、酷いことしたのにさ、ドキドキするとか調子良すぎだよね、て....」
テレビの画面を向いたまま、少し切ない表情の涼太を眺めていた。
不意に、背後のテレビから、速報です、のアナウンスに振り返る。
病院で闘病中だった、まだ若く、人気のあった女優さんが飛び降り自殺し、死亡....。
俺も映画で観たことがある、綺麗で演技も上手な女優さんだった。
「....大変」
「だね、まだ若いのに....」
「それもあるけど、この病院、俊也のお父さんの病院....」
「えっ!?」
繰り返します、と、また女性のアナウンサーが語り出す。
「樹、入るぞー」
俊也の声に慌ててテレビを消した。
「い、いらっしゃい、俊也」
「なんだ、涼太も来てたの」
「な、なにしてた?俊也」
俺は恐る恐る尋ねた。
「なにって、勉強だけど。なんで?」
不思議そうに俺を見つめる俊也にさっきのニュースを知らせる訳にいかない....。
涼太と、どうしたらいい?と、合図のように目配せした。
俊也は変わらず、首を傾げてる。
「てか、そろそろ、食堂行こうぜ。腹減ったし」
あのニュース、他の生徒たちに知られていないといいけど、と願う....。
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