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第106話

「えーっ!俊也、髪!」 俺の部屋に集合したが、涼太は目をまん丸にして黒髪の俊也を指差し、驚愕の声を上げた。 「へえ。いいじゃん。」 豊は静かにそう微笑み、俊也は照れくさそうで、そんな俊也や涼太と豊の異なった反応に俺の頬は綻んだ。 それぞれの夏休みの話題になった。 「お前、うちに泊まれよ、涼太」 テーブルを囲む中、僅かな距離を置いて座る涼太に豊がそう話し、唖然として思わず豊を見つめた。 「は!?やだし!なに考えてんの、豊」 「なに、て...父親は?出張でいないのか?」 その言葉で、ようやく豊は涼太が受けていた父親からの性的虐待の心配だと、遅ればせながら気がついた。 涼太は一瞬、何度か瞬きを繰り返した後、視線を手元に逸らした。 「...わからない。けど、大丈夫....自分でなんとかしなきゃだし....」 「なんでだよ!俺じゃ頼りにならないか?」 「違う...終わらせられるのは自分しかいないから...だから...」 暫しの間を起き、豊は涼太の肩に手を置いた。 「...なにかあったらすぐに連絡しろよ、急いで駆け付ける」 「俺も!俺も近所だし、一人で解決しようとしないで、俺たちも頼って欲しい」 慌てて、俺が豊に続けると、微かに涼太が笑みを浮かべた。 どこか儚げな切ない微笑だった。 「....うん」 「俊也も実家なんだよな?」 「ああ。俺も自由になる為に頑張ってくるよ」 俊也が豊に笑ってみせ、 「二人の言う通り、一人で解決しようとすんなよ?少しでもいい、お前の頼りになりたいんだよ、みんな」 涼太は真摯に俊也の話しを聞いた後、力強く頷いた。 「....俊也も心配だけど、涼太も心配....」 俊也と二人きりになり、ようやく本音を切り出した。 「だな...。涼太の父親が出張行ってくれてることを願うな」 「うん....」 「樹」 「ん?」 互いに膝を抱えて並んで座っていた。 顔を上げるとすぐに俊也が小さなキスをくれた。 「樹もなにかあったらすぐに連絡しろよ?」 「うん。俊也もね」 そうして、再度、どちらからともなく唇を合わせた。

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