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第108話

「もう!なに考えてんの、樹」 俊也が俺を連れ戻すのはマズいと豊に託し、豊に促されて俺は遥斗くん、和斗くんの前から移動したが、目の前に座る涼太から叱咤を受けた。 「...ごめん」 「無駄に関わんな、樹。ほら」 俊也は変わらずおかずの一品を俺の皿に移してくれた。 「わかってる...わかってるけど、俺、役に立ちたくて...」 しょんぼり項垂れていると俊也がぽん、と俺の頭に指の長い手のひらを置いた。 「気持ちは有難いし、嬉しいよ。ありがとう。でも、変に樹を巻き込みたくないし、俺は俺で樹を守りたいから」 そっと落とした視線を上げると、俊也の穏やかな微笑みに見つめられていた。 俺が頑張りすぎても意味はないのかもしれない...。 俊也の悩みや苦しみや色んなしがらみ、俺が少しでも一緒に背負えたらいいのに....。 「夏休みさ、集まれたらいいよな。花火はもうしたし、見ちゃったけどさ、祭りだろ、海にプール」 豊が指折り数え始めた。 「かき氷にりんご飴、あ、綿あめに焼きもろこし」 涼太が口にするなり、みんな、一斉に笑った。 「食いもんばっか!」 「お腹空いてるの?夕飯中なのに」 思わず茶化すと、涼太は真っ赤な顔で、 「違う!夏の風物詩の話し!」 またみんな笑った。 4人揃っての楽しい夏休みを望んでた。 高一の僕ら...。

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