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箸を落としそうな家族団欒の夜
俊也と夕飯までずっと電話で喋ってた。
お父さんは有名な病院の院長でお母さんは有名なお菓子メーカーの企業の孫だとかで、やっぱり俊也、てお金持ちのおぼっちゃまなんだな、てそう感じた。
「今日、母さんが食事、作ってくれるらしいんだ!父さんは会食で遅いし、なにがいい?てリクエストしてくれて、迷ってるんだよね。和食、洋食....?悩むなあ。樹は今日の夕飯はなに?」
凄く嬉しそうに俊也はそう言って。
普段は家政婦さんが食事を作るみたいだけど、俊也はお母さんの作る食事が好きなんだな、て凄く伝わった。
以前、フランス料理のフルコースが嫌い、て言ってたのを不意に思い出したりもした。
難しい話しが多いし、て。
そういえば、以前、連れて行ってくれた三ツ星ホテルの高級なレストランもフォアグラや和牛のステーキやエスカルゴやら凄かった。
確かスープからとか決まりがあったはずだけど、俊也、纏めて持ってきてもらってたな...。
まだ16だというのに俊也は慣れていて、カッコよくて、でも俺がフォークを誤って落としたとき、本当に逃げ出したくなったけど、俊也も、顔見知りらしいウェイターの方もとても優しくしてくれて....。
うちは本当にごくごく有り触れた一般家庭で、ある意味、俺って家庭環境、恵まれてるんだな、て痛感した...。
「父さんに話す前に、直接、樹に話したい。会いたいな...なるべく早く」
俊也がそう言ってくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。
「今日は多分、父さん、会食だから遅いから、顔を合わせはしないけど、今日はちょっと無理だから...明日、会える?なにか、観たい映画とかある?樹は映画、好きだから。
なにか観たいのあるなら俺も観たいな。
樹と観たあの映画、面白かったし」
明るくて優しい笑顔が浮かぶ声....。
本当に俊也は優しくて思いやりがある人なんだな、てつくづく思う。
俺をそう気遣ってくれる、いつも。
ロミオとジュリエットみたいに寮を抜け出しての夕飯も、いつも、なにが食べたい?て尋ねてくれて....。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん、てば!」
「ん?なに?夏美」
両親、妹、家族での食事の最中だった。
「ずーっと、お兄ちゃん、にやにやしてる、いいことあった?」
「に、にやにや...?してた?嘘」
うわ、恥ずかしい...。
まだ中2の妹に気づかれそうで。
「あれ?」
ダイニングテーブルの隣に座る夏美が左手首を見つめ、箸を止めた。
「そんなブレスレット、してたっけ。めっちゃ綺麗...!何処で買ったの!?」
いきなり左手首を掴まれて凝視され、焦る。
恋人に貰いました.....?
い、言えない....。
は、恥ずかしい、さすがに妹には....両親までいる、てのに。
「んー?ホントね。幾らしたの?....待って、それ、シルバー?プラチナかしら....」
夏美に釣られ、母さんにまでブレスレットを凝視された...。
「....ダイヤモンドじゃない?これ。ガラスじゃなさそうね....どうしたの、これ」
「だ、ダイヤモンド....?プラチナ....?」
確かに俊也はプラチナカードを持ってたけど...え?
「こ、これ、て、高い、の、かな....?」
母さんがキョトンとなって、しばらく無言のままだ....。
「....そりゃ、もしかしたら数万か下手したら数十万....もっとするのかしら....プラチナにダイヤモンドだもの」
箸を落としそうになった。
「婚約でもしたの?お兄ちゃん」
夏美、黙って...お願いだから....。
母さんがびっくりしてるから....。
俺もだけど。
「....ちゃんとしっかりお礼言うんだぞ?そして、今度、連れて来なさい」
あ、多分、母さんだけではなく父さんにもバレた...。
「....うん」
隣の夏美におちょくられそう、と思った、けど。
「良かったね、お兄ちゃん!私も会ってみたい!イケメン!?ねえ、お兄ちゃん!」
....夏美に会わせたくないけどな....。
夏美、可愛いから...。妹だけど。
シスコンのつもりはないけど。
俊也、綺麗な顔、してるし、手足も長いし、アイドルが大好きな夏美、キャーキャー言いそう....。
嫉妬とかじゃないけど、多分。
照れくさい....かも。
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