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心配と不安、そして
自分のことばかり、考えてもいられない...。
涼太が心配で、食事の最中も気になって。
「ご馳走さま」
慌てて二階に駆け上がり自室に入りスマホを手にした。
「涼太、大丈夫かな....」
数回の呼び出しの後。
「樹?どうした?」
出たのは豊だった。
あれ...?涼太に掛けたはず、だけど....。
「間違えたみたい、涼太に掛けたつもりが...」
「ああ、今、涼太、俺ん家いるんだけど、電話取れない感じでさ。だから」
....固まった。
「あ、ご、ごめん、じゃ、邪魔した、よね...」
「....いや?別に問題ないけど?」
「で、でも....あれだよね、あの、二人は、えっと....」
ああ、言葉にするのが....恥ずかしい...。
「なに?よくわからないけど」
「だ、だから、ほら二人は、その、せ、から始まる...その...」
「せ...?」
「せ。わかんない...かな」
豊が首傾げている感じする、けど....。
俺はまだ未経験なあれ。
「その....性的なあれ、してたんじゃない?なんかご、ごめん、そ、その....」
狼狽えてしまう。
しばらく無言だった豊が爆笑した。
「なに?性教育?してないけど?」
「え?ち、違うんだ、びっくりしたー」
豊の電話越しに子供の声がした。
はしゃいでいる子供の声...涼太の声も聞こえる。
「弟の相手してて、涼太。だからさ、まあ、小6だし彰人。涼太にも懐いちゃって、手、焼くんだけど、なかなか」
豊が笑った。
「....良かった。心配で、涼太」
しばらく豊は無言だった。
「....俺がケリつけるから、必ず。だから、樹は見守ってやって。俊也が樹のために頑張ったみたいに俺も頑張りたい、涼太のために」
「....俊也が....俺のために?」
「うん。涼太が変わるきっかけをさ、俊也がくれたよね。俺、よく俊也の部屋、行ってたんだよね、実は」
「そう...なの....?」
俊也はなにも言わなかった。
だから、知らなかった....。
「なんか凄いよな、俊也。樹とさっさとくっつけば?て言ったけど、樹はみんなが幸せじゃないと幸せを感じないだろうから、て涼太を変えようと必死だった。
すげーな、て。樹が好きなんだな、本当に、て伝わったよね...。
凄い真剣でさ。樹のこと、凄いよくわかってたんだな、あいつ」
しばらく呆然となった....。
でも、頬が緩む。俊也らしいな、て...。
凄く、人の気持ちに敏感で、そして、繊細で優しい。
だから、過去の過ち、本当は俊也が原因じゃない気するのに、俊也はずっと苦しんでた。
自分のせいで好きな女の子は死んだ、とか。
殺人犯になった、とまで、以前、微笑みながら悲しそうに言ったんだ。
きっと...。
「でも、びっくりして」
「なに?」
「俺が俊也にもらったブレスレット、オーダーメイド、て聞いてはいたんだけど、プラチナとかダイヤモンドみたい....」
多分、豊もびっくりするだろうな....。
「へー、マジ?良かったじゃん」
思っていた反応とは違った。
当然とばかりに豊はそう言った。
「....驚かないの?あ、豊の家もお金持ちだからか」
「いや、俊也の性格なら安いもん、あげたりしなそうだからさ。めちゃくちゃ樹のこと、大切にしてんなー、て思うし、宝物みたいにさ。だから一生モンみたいなのあげそうだから」
....わ。顔が、熱い。
「た、宝物....?俺が....?」
思わず空いた手で頬を抑えた。咄嗟に....。
俺が宝物....。うわ、嬉しい、けど、なんか恥ずかしい、ような。不思議な感じが....。
「お、俺、さ。まだキスしか、その、してなくて」
「え?そうなんだ。コテージでもう済んだのかと思ってた」
「や、なんか....そ、その、俺は、その、し、したいという、か、その....でもひ、避妊具が、その、無いとか、その、俊也、経験ないから、みたいな、なんか、抱き合ったり、キスくらい...で」
たどたどしい俺の話しに耳を傾けてた豊が笑った。
「わ、笑わないでよ!」
「や、違う、ごめん。樹、思いがけず積極的だなあ、つーか。それに俊也らしい、つーか。大切にされてんだな、樹」
わ。また...なんか。体が浮き上がる感覚だ。
嬉しい...すっごく...大切に、されてる、から、とか。
嬉しい....。
「別に焦んなくって良くない?つーか、あれだなあ、俺が涼太にあげたブレスレット、あれ、一万もしなかったんだよなあ、俊也、見習うかなあ」
「俊也を?」
「んー、俺も一生モンあげたいかなあ、なんて」
一瞬、時間が止まった、そんな感じを覚えた。
なんか...二人が変わった...気がした、から。
「あいつ、喜ぶかなあ、貯金卸して、一緒に、とか...」
「でも」
「ん?」
思わず、頬が綻んでしまう...。
豊にこっそり話してしまおう。
涼太に話したらキレちゃうからな。きっと。
「涼太、あのブレスレット、お気に入りだよ。多分、豊が買ってくれて、手首に巻いてくれたから、さ、だからかも」
一瞬の沈黙の後、豊は笑いながら。
「なんか、めっちゃキレてたよな、あん時。なんでそんなにキレるんだ、て思って、俺、笑ったよね。樹にも笑ったんだけど」
思い出したら、互いに笑えるな、確かに。
「子供服売場あるよ、だっけ。めっちゃ失礼な、て俺も笑った、怒りながら」
ああ、いいな、こういうの....。
互いに近況を話して、思い出し笑いして、これが友達、て感じする。
俊也が繋げてくれたんだ、この感じ。
やっぱり俺、俊也が大好きだ...。
本当に、本当に俊也には敵わない。
優しくて、賢くて、思いやりがあって、繊細なのに本当は勇敢で。
大好きすぎる....。
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