122 / 154
宙に浮く感覚が...
ああ....俊也が、好きだな、俊也の横顔に思わず見蕩れながら並んで手を繋いで歩いてる....。
真っ直ぐな柔らかい眼差し。仄かな微笑。
ずっと、ずっと見ていたいな....。
金髪の俊也もかっこよかったけど、端正な色白な顔に似合ってたけど。
黒髪の俊也もまた凛々しくて、どちらの俊也も...好きだな。
「一緒に映画館に来た記念とか....何かいる?樹」
俊也は嬉しそうに俺を見つめ、そう微笑んで....。
パンフレットを二冊、購入してくれ、一冊を俺に手渡してくれて....。
「どうする?お腹は空いてない?喉乾いてない?カフェか何か入る?」
....愛されてる、て感じがして、キュンキュンするというより空に体が浮かんでるみたい、宙に浮いているみたい、ぽかぽかして、高揚してる、そんな感覚....。
唐突に肩を抱かれ引き寄せられ、俊也に見蕩れながら歩いてた俺は顔を覗き込まれた。
ピアノを弾く俊也の長くて綺麗な指先....大きな優しい手のひらが俺の肩を抱いて...ドキドキする....。凄く。
「大丈夫?どうかした?」
俊也の顔が、近くて。
うわ....俊也の瞳が俺をしっかり見てる、そんな真っ直ぐで優しい瞳から目が離せない....。
でも、なんだろ、照れくさくて、口元を思わず軽く抑えて。
「う、ううん....。ただ....」
「ん?」
尚更、俊也は俺の瞳を見つめて。
「どうした?樹」
「お、俺、....好きだ、俊也、すっごく、すっごく好きだ」
ああ、なんだろ、俊也はしばらく瞬きもせずに....でも直ぐに柔らかく微笑んだ。
「俺も。すっごい好きだよ、樹のこと」
う、うわ....。
う、嬉しい、な....。
見つめられ、本当に、本当に優しく嬉しそうに言われたら...嬉しくてたまらない....。
「とりあえず、カフェでも入ろうか?歩き疲れる前に」
....歩き疲れる前に。その響き、いいな。
俊也、好きだ。どうしよう、凄く大好きだ。
「俊也、俺、ラブホテル...行きたいな、前、行った、とこ、行きたいな....」
しばらく俊也はきょとん、としてた。
なにもしていない、ただ、2人ではしゃいで抱き締められただけ、だった。
まるでVIPルームみたいな部屋で....。
一緒に備え付けの温泉に浸かって、食事をしたり映画を観たりした。
「んー、後で豊たちと合流する予定だけど...いいの?」
「え....?」
「ん?樹、涼太のこと、心配かな、とか。豊たちのこと...思ったんだけど。2人はショッピング行く、て聞いて、昨日、豊から。断り入れようか、だったら」
俊也が俺に尋ねた。
そうだ、2人も映画に誘うつもりだったんだけど...2人きりで行きなよ、俊也は2人きりで行きたいと思う、て豊にそう窘められて....。
もしかして、俊也は俺が涼太たちが心配じゃないか、て気遣って、くれた、のかな....。
「どうする?樹。俺はどちらでもいいけど....」
優しく勇敢な瞳に囚われて。
吸い込まれそうになる。
あ、本当だ。無理に体を繋げなくても、このふわふわした、愛されてる、て感じ、この感覚...まだ感じていたい。
俊也の肩に凭れて。
「ん....喉、乾いてる、な、とても」
にこ、と俊也が微笑んだ。
「俺も。なにか飲もうか。樹はミルクティーでいい?何がいい?」
ああ...嬉しいな。
肩を抱かれて、そんなに優しく尋ねられて、俺、すっごく幸せだな....。
「うん....」
見蕩れながらも俺は小さく頷いた。
俊也の微笑に釣られるように微笑みながら、頬を染めながら....。
ともだちにシェアしよう!