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俊也の想い

いざお風呂を上がったものの.... 果たして、備え付けのガウンを着るか、それとも着てきた私服の方がいいか迷った。 夏美がせっかくコーディネートしてくれた、てのもある、けど.... なんだか、真っ白なガウン姿で出ていくのも小っ恥ずかしい気がするし....。 「それに備え付けのガウン、サイズが大きいし...な」 1人であれこれ悩み、結局、再び、私服を身にまとい、俊也のいるソファに向かう。 なにか思い悩んでいるように一点を見つめ、頬杖をつく俊也がいた。 「...俊也。お風呂上がったけど...」 「あ、うん」 「...どうしたの?俊也、考えごと...?」 「んー、まあ、そんなとこ」 なんだろう、と俊也の隣に座る。 「....俺、さ」 「うん」 「多分、樹を抱いたら一生、離したくなくなる気がして。ずっと一緒にいたい、てなるかな、て思ったらさ」 「....う、うん」 「....指輪とか、重いのかな、とか。でも、親の金だと違うかな、とか」 「ゆ、指輪....?」 思わずまたカフェの時みたいに口元に軽く握った拳を添えた。 「あ、ごめん、やっぱり重たい、よね...」 「う、ううん、違う...びっくりした、だけ....」 俊也が俺の瞳を真っ直ぐに捉えるように見つめる。 「樹はさ、進路はもう考えていたりする?」 「進路....」 そうか、俊也はピアノを...。そう話してくれたんだ...。 「俺、まだ特に考えてない、よ...」 「そっか、俺、さ。音大もありかな、とも思うけど、海外もどうかな、て思ったりもして」 「....海外」 「うん。語学も学べるし、世界観ていうのかな、広くなるかな、とか思うんだ。もし、樹が嫌じゃないなら樹は一緒に、どう...かな」 「....海外の大学、てこと?」 返事の代わりに俊也が小さく笑んだ。 「で、でも俺、海外に行くようなレベル無いし....その、うちは本当、ごく有り触れた家で、お金も...無いというか、多分、だけど....」 俊也がにこ、と笑んだ。 「だからだよ。勉強ならなんなら俺も教えれるし、高1の今からなら間に合うと思う。お金なら俺が一緒に居たいんだ。 だから、樹のご両親に承諾とか貰わなきゃだし、こちらが出すのが当然というか」 う、うわ....プロポーズみたい....。 でも....すぐに冷静になり、 「でも、俊也...俊也は婚約者、が...遥斗くん...」 「うん。夏休みの期間に顔合わせがあるんだ。向こうの両親も来るし、はっきり断る。直接」 毅然とした俊也に嬉しさが隠しきれない....。 「もし、なんなら、豊たちも誘う?2人にとってもいい機会なんじゃないかと思うし、豊もせっかく頭いい訳だし」 確かに、豊の性格を考えたら海外の大学とか乗って来そう...。 「豊の場合、涼太に勉強、教えてやってさ、...まあ、その前に涼太の父親の問題を解決させなきゃだけど」 一瞬、そうだよね、と落胆しそうになった、けど。 「....そんな顔しないでよ、樹。大丈夫だから、必ず。そう信じないとなにも始まらないしなにも終わらない。それに樹には笑っていて欲しいし。樹の笑顔が好きだから」 ....嬉しい、な。 ストレートに伝えてくれて、嬉しい....凄く。 俊也の優しい眼差しに吸い込まれそうだ。 その胸に思わず飛び込むと抱き締められた。 「キス、していい?」 「うん」 恥ずかしくなんて、ない、な、全然....。 微笑みながら俊也を見上げ、唇を重ねた。

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