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涼太side
不意に目が覚めた。
少し離れた隣では豊はぐっすり眠っていて、ベッドの下の2つ並んだ1つの布団には樹と俊也が眠っている。
手持ち無沙汰でベッドから起き上がった。
みんなを起こす訳にもいかないし、かといって、リビングのある一階に勝手に降りづらい。
豊のお父さんは仕事かもしれないけど、多分、お母さんがいる筈だし...。
昔から豊の家では人見知りになってしまうから...。
壁時計を見上げたら朝の10時過ぎだった。
と、突然、締め切っていたドアが開き、彰人が顔を覗かせた。
「涼太くーん!朝ごはんだって!さっきも来たけど、みんな寝てたからまた来た!」
思わず笑顔を返し、彰人に歩み寄る。
「そっか。ありがとう、彰人。みんなを起こさなきゃね。彰人はもう食べた?朝ごはん」
彰人がぶんぶんと首を横に振る。
「ううん!みんなと食べたい、て、食べてない!お兄ちゃーん!起きて!朝ごはんー!」
んー、と横になったまま、豊がくぐもった声を上げた。
「んー...何時?彰人...」
「10時過ぎだよ、豊」
「あー...起きてたんか、涼太」
「うん、さっきだけど。樹たちも起こさなきゃね」
そうして、2人も起き、みんなそれぞれ顔を洗い、歯を磨き、豊のお母さんの待つリビングへ。
ダイニングキッチンに彰人の分も含め、5人ぶんの朝食が用意されていた。
炊きたてのごはんにわかめと豆腐、葱のお味噌汁、玉子焼き、焼き鮭、ほうれん草のお浸しに茄子の煮浸し。
「えーっ。パンが良かったなあ、僕」
彰人が可愛い声を上げた。
「わがまま言っちゃダメだよ、彰人」
彰人を窘めた。
「すみません、お手数をお掛けしてしまって」
俊也は5人ぶんという量に恐縮しているみたいだ。
「いいのいいの。お代わりもあるからたくさん食べてね」
全員で、いただきます、と朝食をご馳走になった。
「にしても、どうする?今日」
樹が切り出した。
「僕、涼太くんと遊びたい!」
「こら。お兄ちゃんたちの邪魔しちゃダメよ、彰人」
ふふ、と笑んだ。
「大丈夫です。夏休みの宿題は終わったの?彰人」
「んー、まだちょっと」
「豊兄ちゃんに宿題を見てもらったら遊ぼうか」
「...宿題、しなきゃダメ?」
上目遣いで口を尖らせて彰人が小さく聞いてきた。
「うん。宿題を済ませてからなら、彰人が好きな遊びしよ?」
「...わかった」
不意に、樹の視線を感じた。
「本当だね。彰人くん、涼太に懐いてるね」
「え?うん、かな?」
豊が嬉しそうな柔らかい眼差しで口元を綻ばせて見つめていて...なんだか照れくさい。
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