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深夜のキス
豊と一緒に部屋に戻ってきた俊也が布団に潜り込んできて。
「おやすみ、樹」
背中から優しく抱き締められ、左のこめかみに小さく可愛い口付けをくれた。
トイレに行きたくなって一旦起きたら俊也がいなくて、偶然、豊との話しを聞いてしまった。
盗み聞きのつもりはなかったんだけど...。
そっと布団の中で横たわったまま振り返る。
瞼を閉じた俊也。
もう眠った、のかな...。
体を翻し、俊也を向く。
不意に俊也の瞳が開いた。
「目が覚めちゃった?樹」
2人を気遣い、とても小さな声。
涼太の規則的な寝息がしていて、しばらくすると豊も眠ったようだった。
「う、ん...」
「どうした?おいで」
俊也が腕を伸ばし、抱き締めてくれた。
優しい声、暖かい胸の中...。
「...ごめん」
「なにが?」
「うん...俺が初めてじゃない、て...聞くつもりはなかったんだ、けど」
一瞬の沈黙の後。
「...俺こそ、ごめん。嫌な気分にさせたよね」
慌てて顔を上げ、俊也の瞳を見据えた。
「嫌な気分なんかじゃない。ただ、もっともっと、俊也を大切にしたい、てそう思っただけ」
俊也はきょとんとした後、微笑んでくれた。
「ありがと。でも過去の話しだし。豊に話したのも、樹から抱かれた、て話しの流れでしかないし。あの頃とは全然、違う。
愛されてるんだな、てさ、凄く感じたし。
樹に見つめられながら、キスを交わしながら、幸せだったから。凄く。
樹も同じ気持ちだったら嬉しいけど」
俊也の笑みに、俺まで笑顔になる。
「そりゃ...当たり前だよ。すっごい幸せだった。だから、つい口滑らせちゃって涼太に話しちゃってて...ごめんね、勝手に」
また俊也が肩を竦めて笑う。
無邪気で可愛い笑顔。
大好きな笑顔。
「別に平気。...キス、していい?」
「うん。...俺もずっとしたかった」
そっと顎を上げると、俊也の顔が近づいてきて、唇に優しいキスをくれた。
柔らかくて暖かいキス。
幸せ、とても...。
唇を離し、再度、抱き締め合い、濃厚なキスに変わる...。
「...さすがにこれ以上は無理だから」
「うん。大丈夫。...大好き、俊也」
「俺も。好きだよ、樹。大好き」
互いに顔を寄せ、笑い合い、そして俊也の胸に顔を埋め、瞼を閉じた。
「おやすみ、俊也」
「おやすみ、樹」
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